7 良好な生活環境の保持
(1)風俗営業等の状況
警察では、風営適正化法に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を行っている。
① 風俗営業の状況
風俗営業の許可数(営業所数)は、近年、継続的に減少している。

② 性風俗関連特殊営業の状況
性風俗関連特殊営業の状況についてみると、近年、店舗型性風俗特殊営業の届出数は、継続的に減少し、無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗特殊営業の届出数は、継続的に増加している。

③ 深夜酒類提供飲食店営業の状況
深夜酒類提供飲食店営業の届出数は、近年、継続的に減少している。

④ 特定遊興飲食店営業の状況
特定遊興飲食店営業の許可数(営業所数)は、近年、継続的に増加している。

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
① 売春事犯
売春事犯の検挙件数及び検挙人員はいずれも増減を繰り返している。具体的には、SNS等を利用して、売春の周旋をする目的で、人を売春の相手方となるように誘引する事犯や、マッサージ店を仮装して、不特定多数の男性客を相手に売春をさせる事犯がみられる。
このほか、売春グループが、海外での売春を女性に勧めるといった事例もみられる。

CASE
マッサージ店経営者の中国人の女(45)は、令和6年5月、同店従業員である中国人の女性を店に居住させ、不特定の男性客を相手に売春させることを業とした。同年8月までに、経営者の女を売春防止法違反(売春をさせる業)等で、従業員の女性を入管法違反(資格外活動)等で逮捕した(京都)。
② 風俗関係事犯
近年、風営適正化法による検挙件数は、おおむね減少傾向にある一方で、検挙人員はおおむね増加傾向にある。
また、わいせつ事犯に関しては、インターネットを利用して、わいせつな動画を販売する事犯やわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯がみられる。
さらに、賭博事犯に関しては、いわゆるオンラインカジノを利用した賭博事犯がみられるほか、店舗の内外に複数の監視カメラを設置する、見張り役の従業員を常時配置する、身分確認を行って常連客以外の客を排除するなど、警察の取締りから逃れるための対策が巧妙化している。


(3)人身取引事犯等への対策
① 人身取引事犯の検挙・保護の状況
警察では、令和4年に政府が策定した「人身取引対策行動計画2022」等に基づき、出入国在留管理庁等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な雇用主、ブローカー等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び人身取引(性的サービスや労働の強要等)の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っているほか、被害者の早期保護のため、警察等に情報提供や被害申告をするよう呼び掛けるリーフレットを複数の言語で作成し、これをウェブサイトに掲示するとともに、関係機関等を通じて周知するなどの取組を行っている。
さらに、人身取引事犯の被害者等による警察への通報を促すため、SNSの広告配信を活用した広報を実施している。
令和6年中の人身取引事犯の検挙人員は57人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は63人で、その国籍については、日本が約9割を占めており、日本人被害者の年齢は、18歳未満が約7割を占めていた。



人身取引事犯の被害者向けリーフレット

SNSの広告配信を活用した人身取引対策の広報
CASE
会社員の男(26)らは、令和5年12月から令和6年3月にかけて、知人女性を自己の管理する場所に居住させ、不特定の男性客を相手に売春させることを業とした。同年9月、同男らを売春防止法違反(売春をさせる業)で逮捕した(山梨)。
② アダルトビデオ出演被害問題への対策
アダルトビデオ出演被害問題に対し、警察では、各都道府県警察で指定された統括責任者を中核として、各種法令を適用した厳正な取締り、被害防止のための広報啓発、相談体制の充実等を推進している。
CASE
アダルトビデオ制作販売会社役員の男(42)は、令和5年4月から同年6月にかけて、出演者の女性との間で性行為映像制作物の出演契約を締結しようとするに際し、あらかじめ、説明書面等を交付等しなかった。令和6年1月、同男をAV出演被害防止・救済法違反(説明書面等の不交付等)で逮捕した(長崎)。
(4)銃砲等及び刀剣類の適正管理と危険物対策
① 銃砲等及び刀剣類の適正管理
令和6年末現在、銃刀法に基づき、都道府県公安委員会から8万2,164人が、16万5,253丁の猟銃及び空気銃の所持許可を受けている。令和6年中、申請を不許可等とした件数は36件、所持許可を取り消した件数は32件であった。また、クロスボウにあっては、令和6年末現在、105人(前年比-9人)が159本(前年比-20本)の所持許可を受けている。令和6年中、申請を不許可等とした件数及び所持許可を取り消した件数はいずれも0件であった。さらに、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。
令和6年6月、銃砲等の発射及び所持に関する罰則の強化、電磁石銃の所持の禁止に関する規定の整備、ライフル銃の範囲の拡大等を内容とする銃刀法の一部を改正する法律が成立し、令和7年3月1日までに全面施行された。警察では、この改正内容の広報啓発に努めるとともに、銃刀法を厳正に運用し、銃砲等及び刀剣類の所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めるなど、銃砲等及び刀剣類による事件・事故の未然防止に努めている。



② 危険物対策
火薬類や特定病原体等、放射性物質といった危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等の規制に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律、化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。
警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

(5)環境事犯対策
① 廃棄物事犯(注)
令和6年中の廃棄物事犯の検挙事件数の約5割を、廃棄物の不法投棄事犯が占めている。警察では、環境行政部局との人的な交流や情報交換を引き続き行うなどし、廃棄物事犯の早期発見・早期検挙に努めている。
注:廃棄物処理法違反に係る事犯

CASE
会社役員の男(53)は、自社の土地等に保管している産業廃棄物である木くず、廃プラスチック類等を全量撤去し適正処理することを命じられたが、履行期限までにこれに従わなかった。令和6年9月、同男及び1法人を廃棄物処理法違反(改善命令違反)で検挙した(茨城)。
② 動物・鳥獣関係事犯(注1)
令和6年中の動物・鳥獣関係事犯の検挙事件数のうち、犬、猫等を殺傷するなどの動物虐待事犯(注2)は160事件(前年比-21事件)であり、前年と比べて減少した。また、違法に捕獲等した鳥獣を飼養するなどの鳥獣保護管理法違反や、希少動物を違法に取引するなどの種の保存法違反等も、引き続き検挙されている。
注1:鳥獣保護管理法違反等に係る事犯
注2:動物愛護管理法第44条に係る事犯

CASE
元動物販売業の男(81)は、自身の管理する施設において、令和6年5月頃、飼養していた犬3頭を、ビニール袋等で密封したかごに閉じ込めるなどし、窒息させて、死亡させた。同年6月、同男を動物愛護管理法違反(愛護動物の殺傷)で逮捕した(埼玉)。
(6)探偵業の状況
令和6年中の探偵業法での検挙件数は3件、行政処分件数は34件(営業廃止0件、営業停止0件及び指示処分34件)であった。警察では、探偵業法に基づき、探偵業者(注)の業務実態を把握し、違法行為に対しては厳正に対処するとともに、業界団体と連携の下、研修会等を通じて、探偵業務の運営の適正化を図っている。
注:探偵業の届出数(営業所数)は7,098件(令和6年末現在)