5 警察活動の高度化・合理化
技術革新や少子高齢化等の進展が社会に大きな変革をもたらしている中で、警察は、これらに適応し、新たに生じ、又は変化する脅威に的確に対応していく必要がある。また、デジタル化施策の推進等を通じ、国民の利便性向上や負担軽減を図っていくことが求められている。
このような状況の中、警察では、警察活動への先端技術等の導入や、警察が所管する行政手続のオンライン化等を強力に推進し、警察活動の高度化・合理化を図っている。
(1)先端技術等の活用による警察力の強化に向けた取組
警察活動に科学技術を導入するに当たっては、全国の警察活動における技術ニーズを的確に把握するとともに、幅広い技術シーズの動向や研究開発状況等に関する情報を集約する必要がある。社会経済情勢の変化に伴う都道府県警察の技術ニーズの変化を捉えるため、警察庁では、全国的な調査分析を継続的に実施している。また、科学技術そのものも、世界各国における研究開発を通じて日進月歩で発展していることから、警察庁では、国内外の企業、学術研究機関、法執行機関等から、警察活動に導入し得る技術シーズに関する情報を幅広く集約している。
さらに、警察活動の現場に先端技術を安全かつ適切に導入するためには、あらかじめその課題や効果を的確に把握する必要があることから、警察庁では、先端技術の導入を検討するに当たって事前に実証実験を実施するなど、当該先端技術の導入による効果やその活用の在り方について検証・評価を行っている。
また、警察庁では、少子高齢化等により限られた人的・財政的資源の下で最大限の効果を上げることができるよう、こうした取組を通じ、AIや無人航空機といった先端技術等の積極的な活用による警察力の強化を図っている。

(2)警察における情報システムの合理化・高度化に向けた取組
警察では、組織全体の情報システムの有効性の向上、重複する機能の排除、取り扱うデータの効果的な活用の推進を図るため、現場の警察活動や警察行政を支える情報システムについて、その利用に係る業務プロセスの全体的な見直しを実施するとともに、情報システムの共通化・集約化を図るなど、情報システムの合理化・高度化に向けた取組を推進している。
警察庁では、平成30年度以降、警察庁及び各都道府県警察の従来のシステムを集約・統合しつつ、個々のシステム同士の連携を容易にするなどの構想を実現するため、警察における情報システムの在り方について検討を進め、令和3年4月、警察共通基盤の運用を開始した。
令和5年1月には運転者管理システム(注1)が、令和5年3月には遺失物管理システム(注2)が、それぞれ一部の都道府県警察において警察共通基盤上での運用を開始しており、また、令和6年4月には指名手配被疑者、盗難車両等に関する情報を管理するシステムが、警察共通基盤上での運用を開始した。その他のシステムについても警察共通基盤上での運用に向けて検討を進めている。
注1:運転免許に関するデータ等を取り扱うシステム
注2:91頁参照(第2章)

MEMO 業務継続性の確保
現場の警察活動や警察行政を円滑に行うためには、警察における情報システムの安定的・継続的な稼働が不可欠である。このため、警察庁では、大規模災害が発生するなどして警察施設が損傷等を受けた場合においても、情報システムが停止することがないよう、その運用拠点を多重化することとし、令和5年9月から2拠点での運用を開始した。また、耐災害性の高い情報システムの整備・維持管理や発災時を想定した訓練を実施するなどして、業務継続性の確保に係る取組を推進している。
(3)警察行政手続のデジタル化に向けた取組
警察が所管する行政手続について、利用者中心の行政サービスを実現するため、一層の国民の利便性向上や負担軽減を図っていくことが求められている。警察庁では、現在、マイナンバーカードと運転免許証の一体化(注1)、遺失物関係手続のオンライン化(注2)の全国展開、反則金の納付方法の多様化等に向けた取組・検討を進めている。
注1:161頁参照(第5章)
注2:91頁参照(第2章)