3 犯罪収益の剝奪
犯罪収益が、犯罪組織の維持・拡大や将来の犯罪活動への投資等に利用されることを防止するためには、これを剝奪することが重要である。警察では、没収・追徴の判決が裁判所により言い渡される前に犯罪収益の隠匿や費消等が行われることのないよう、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に定める起訴前の没収保全措置を積極的に活用し、没収・追徴の実効性を確保している。
(1)没収・追徴の状況
第一審裁判所において行われる通常の公判手続における組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況は、図表4-24のとおりである。
図表4-24 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(令和元年~令和5年)

(2)起訴前の没収保全
令和5年中における起訴前の没収保全命令は、組織的犯罪処罰法に基づくものとして風営適正化法違反、詐欺、窃盗、入管法違反、賭博事犯等に関して211件(前年比49件(30.2%)増加)が、麻薬特例法に基づくものとして20件(前年比3件(13.0%)減少)が、それぞれ発出されている。
図表4-25 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(令和元年~令和5年)

CASE
ソープランドの実質的経営者の男(52)らは、令和4年4月から令和5年2月にかけて、同店において、業として、不特定の男性客を相手に女性従業員が売春を行う場所を提供した。同年3月までに、同男ら7人を売春防止法違反(場所提供業)で逮捕するとともに、押収した現金のうち約150万円に対して、同年4月、組織的犯罪処罰法の規定に基づく起訴前の没収保全命令が発出された。また、同年5月、同男から押収した現金約1億2,000万円に対して、同法の規定に基づく追徴保全命令が発出された(神奈川)。