第4章 組織犯罪対策

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

令和5年(2023年)中の薬物事犯の検挙人員は1万3,330人と、引き続き高い水準にあり、20歳代以下の若年層による大麻事犯が相次いで検挙されたほか、大麻事犯の検挙人員が警察庁が保有する昭和33年(1958年)以降の統計で最多となるなど、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。薬物は、乱用者の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は社会の安全を脅かす重大な問題である。

 
図表4-7 薬物事犯の検挙人員(令和5年)
図表4-7 薬物事犯の検挙人員(令和5年)
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(1)薬物事犯別の検挙状況

① 覚醒剤事犯

令和5年中、覚醒剤事犯の検挙人員は前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の44.4%を占めている。また、押収量は1,342.9キログラムと、前年より1,053.9キログラム増加した。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員に占める暴力団構成員等の割合が高いことのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。

② 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は過去最多となり、全薬物事犯の検挙人員の48.6%を占め、覚醒剤事犯の検挙人員を上回った。近年、面識のない者同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら大麻の売買を行う例もみられる。大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

 
図表4-8 各種薬物事犯の検挙状況及び押収量の推移(令和元年~令和5年)
図表4-8 各種薬物事犯の検挙状況及び押収量の推移(令和元年~令和5年)
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(2)薬物密輸入事犯の検挙状況

令和5年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は419件と、前年より125件(42.5%)増加し、検挙人員は495人と、前年より119人(31.6%)増加した。

覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-9のとおりである。令和5年中は、覚醒剤の押収量が前年より増加し、また、暴力団構成員等や来日外国人の検挙人員が前年より増加した。覚醒剤密輸入事犯の検挙件数は、前年より増加し、覚醒剤に対する根強い需要が存在しているものと考えられる。

 
図表4-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成26年(2014年)~令和5年)
図表4-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況及び押収量の推移(平成26年(2014年)~令和5年)
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(3)犯罪組織等の動向

① 暴力団による薬物事犯

令和5年中の薬物事犯の検挙人員(1万3,330人)のうち、暴力団構成員等が20.8%(2,778人)を占めている。また、密売関連事犯(注)の検挙人員(767人)のうち、暴力団構成員等が34.8%(267人)を占めているところ、これらを薬物事犯別でみると、覚醒剤の密売関連事犯の検挙人員(333人)のうち50.8%(169人)を、大麻の密売関連事犯の検挙人員(389人)のうち22.1%(86人)を、それぞれ暴力団構成員等が占めており、覚醒剤や大麻の密売に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け

② 来日外国人による薬物事犯

令和5年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は870人と、前年より218人(33.4%)増加した。このうち、営利目的輸入事犯の検挙人員は234人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが25.2%(59人)を占めているほか、密売関連事犯の検挙人員は31人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが51.6%(16人)を占めている。

CASE

道仁会傘下組織の幹部の男(34)らは、令和3年3月から令和5年2月にかけて、熊本県内等において、SNSを利用するなどして覚醒剤や大麻の密売等をした。同年4月までに、同男ら10人を覚醒剤取締法違反及び大麻取締法違反(営利目的所持等)等で検挙するとともに、同男らから覚醒剤や大麻を購入するなどした客25人を覚醒剤取締法違反及び大麻取締法違反(所持等)等で検挙した(熊本)。

 
押収された覚醒剤や大麻等
押収された覚醒剤や大麻等


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