第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動
第1節 犯罪情勢とその対策
刑法犯認知件数は、令和3年(2021年)に戦後最少を迎えたものの、それ以降、2年連続で前年比増となり、新型コロナウイルス感染症の感染拡大前である令和元年の水準に近づきつつある。また、重要犯罪(注1)の認知件数は既に令和元年を上回る数値となったほか、SNSで実行犯を募集する手口が特殊詐欺のみならず強盗等にまで拡大している。さらに、令和5年中においては、岸田首相に対する爆発物使用襲撃事件や、長野県中野市で警察官2人を含む4人が猟銃等により殺害される事案も発生した。加えて、インターネットを利用した詐欺の増加を背景として、財産犯(注2)の被害額が増加するなど、今後の動向について注視すべき状況にある。
サイバー事案については、インターネットバンキングに係る不正送金被害が過去最多となったほか、国家を背景に持つ集団によるサイバー攻撃も確認されているなど、極めて深刻な情勢が続いている。
特殊詐欺については、認知件数は3年連続、被害額は2年連続で増加したほか、架空料金請求詐欺の手口での被害が昨年比で大幅に増加するなど、深刻な情勢が続いている。また、令和5年下半期において、SNSを使用した非対面型の投資詐欺やロマンス詐欺の被害が急増している。
こうした犯罪の中には、首謀者や指示役のほか、犯行拠点が海外に所在するなどのケースもみられる(注3)。
人身安全関連事案については、ストーカー事案の相談等件数及び配偶者からの暴力事案等の相談等件数がいずれも昨年から増加したほか、児童虐待又はその疑いがあるとして警察から児童相談所に通告した児童数が過去最多に上るなど、注視すべき状況にある。
以上を踏まえれば、我が国の犯罪情勢は、厳しい状況にあると認められる。
注1:殺人、強盗、不同意性交等、不同意わいせつ、放火、略取誘拐及び人身売買
注2:強盗、恐喝、窃盗、詐欺、横領及び占有離脱物横領
注3:国外所在被疑者等に係る取組については、143頁参照(第4章)
1 刑法犯
(1)刑法犯の認知・検挙状況
刑法犯の認知・検挙状況の推移は、図表2-1のとおりである。

(2)重要犯罪の認知・検挙状況
重要犯罪の認知・検挙状況の推移は、図表2-2のとおりである。

① 殺人
殺人の認知・検挙状況の推移は、図表2-3のとおりである。



② 強盗
強盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-6のとおりである。



③ 不同意性交等・不同意わいせつ
不同意性交等の認知・検挙状況の推移は、図表2-9のとおりである。
また、不同意わいせつの認知・検挙状況の推移は、図表2-10のとおりである。


④ 放火
放火の認知・検挙状況の推移は、図表2-11のとおりである。

⑤ 略取誘拐・人身売買
略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移は、図表2-12のとおりである。略取誘拐・人身売買の認知件数を被害者の男女別でみると、女性が被害者である割合は、令和5年は78.1%であった。

(3)刑法犯による身体的被害の状況
刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移は、図表2-13のとおりである。
