第7章 警察活動の支え

5 警察活動の高度化・合理化

技術革新や少子高齢化等の進展が社会に大きな変革をもたらしている中で、警察は、これらに適応し、新たに生じ、又は変化する脅威に的確に対応していく必要がある。また、デジタル化施策を推進することにより、国民の利便性向上や負担軽減を図っていくことが求められている。

このような状況の中、警察では、警察活動への先端技術等の導入や警察が所管する行政手続のオンライン化等を強力に推進し、警察活動の高度化・合理化を図っている。

(1)先端技術等の活用による警察力の強化に向けた取組

科学技術を警察活動に的確に導入するためには、全国の警察活動における技術ニーズを把握するとともに、幅広い技術シーズの動向や研究開発状況等に関する情報を集約する必要がある。社会経済情勢の目まぐるしい変化に伴い、都道府県警察の技術ニーズも変化するため、警察庁では、全国的な調査分析を継続的に実施している。また、科学技術そのものも、世界各国における研究開発を通じて日進月歩で発展していることから、警察庁では、国内外の企業、学術研究機関、法執行機関等から、警察活動に導入し得る技術シーズに関する情報を幅広く集約している。

さらに、警察活動の現場に先端技術を安全かつ適切に導入するためには、あらかじめその課題や効果を的確に把握する必要があることから、警察庁では、先端技術の導入を検討するに当たって事前に実証実験を実施するなど、当該先端技術の導入による効果やその活用の在り方について検証・評価を行っている。

警察庁では、少子高齢化等により限られた人的・財政的資源の下で最大限の効果を上げることができるよう、こうした取組を通じ、AIや無人航空機といった先端技術等の積極的な活用による警察力の強化を図っている。

 
図表7-9 先端技術の導入に向けた取組
図表7-9 先端技術の導入に向けた取組

(2)警察における情報システムの合理化・高度化

警察では、犯罪捜査活動をはじめとする現場の警察活動や警察行政を円滑に行うための情報システムを整備・維持している。従来、警察における情報システムは、警察庁のシステムと各都道府県警察が個別に整備・維持するシステムを接続することで構成されたものであったため、コストが重複してしまうなどの課題があった。

そこで、警察庁では、平成30年度以降、警察庁及び各都道府県警察の従来のシステムを集約・統合しつつ、個々のシステム同士の連携を容易にするなどの構想を実現するため、情報システムの在り方について検討を進め、令和3年4月、警察共通基盤の運用を開始した。

令和5年1月には運転者管理システム(注1)が、令和5年3月には遺失物管理システム(注2)が、それぞれ一部の都道府県警察において警察共通基盤に移行しており、今後、全国的に警察共通基盤への移行が進められていく予定である。さらに、その他のシステムについても警察共通基盤への移行に向けて検討を進めている。

注1:運転免許に関するデータ等を取り扱うシステム

注2:84頁参照(第2章)

 
図表7-10 各種情報システムの共通基盤への集約
図表7-10 各種情報システムの共通基盤への集約

MEMO 警察活動の在り方の見直し

警察庁では、各種システムの警察共通基盤への移行の機会を捉え、BPR(注)を推進している。

例えば、運転者管理システムが警察共通基盤に移行するに当たり、運転免許証の更新に係る従来の業務のプロセスの見直しを行い、新たな機器の導入等も進めつつ、申請者の書類記入の負担軽減や待ち時間の短縮、窓口職員の手続の省力化等を図った。

注:Business Process Reengineeringの略。業務の流れの抜本的な改革を指す。

 
自動受付機を活用した手続の様子
自動受付機を活用した手続の様子

(3)警察行政手続のデジタル化

警察が所管する行政手続について、利用者中心の行政サービスを実現するため、一層の国民の利便性向上や負担軽減を図っていくことが求められている。警察庁では、現在、運転免許証とマイナンバーカードの一体化(注1)、遺失物関係手続のオンライン化(注2)、反則金の納付方法の多様化等を実現するために必要な検討を進めている。

注1:155頁参照(第5章)

注2:84頁参照(第2章)



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