第4章 組織犯罪対策

3 暴力団排除活動の推進

(1)国及び地方公共団体における暴力団排除活動

国及び地方公共団体は、犯罪対策閣僚会議の下に設置された暴力団取締り等総合対策ワーキングチーム(以下「ワーキングチーム」という。)における申合せ等に基づき、警察と連携して、受注業者の指名基準及び契約書に暴力団排除条項(注)(下請契約、再委託契約等に係るものを含む。)を盛り込むほか、受注業者に対して、暴力団等に不当に介入された場合の警察への通報等を義務付けるなどの取組を推進している。また、民間工事等に関係する業界及び独立行政法人に対しても、同様の取組が推進されるよう所要の指導・要請を行っている。

注:法令、規約及び契約書等に設けられている条項であって、許可を取得する者、事務の委託の相手方、契約等の取引の相手方等から暴力団員等の暴力団関係者又は暴力団関係企業を排除する旨を規定する条項

(2)各種事業・取引等からの暴力団排除

① 各種事業からの暴力団排除

近年、各種事業から暴力団関係企業等を排除するため、法令等において暴力団排除条項の整備が進んでおり、警察では、暴力団の資金源を遮断するため、関係機関・団体と連携して、貸金業、建設業等の各種事業からの暴力団排除を推進している。

② 各種取引からの暴力団排除

近年、暴力団の資金獲得活動が巧妙化・不透明化をしていることから、警察では、取引先が暴力団関係企業等であると気付かずに企業が経済取引を行ってしまうことを防ぐため、「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」(注)及びワーキングチームにおける申合せに基づき、関係機関・団体と連携を強化し、各種取引からの暴力団排除を推進している。

注:平成19年の犯罪対策閣僚会議幹事会における申合せ。企業が反社会的勢力による被害を防止するための基本的な理念や具体的な対応について取りまとめたもの。

(3)地域住民等による暴力団排除活動

警察では、暴力追放運動推進センター(以下「暴追センター」という。)及び弁護士会と緊密に連携し、適格暴追センター制度(注)も活用しながら、事務所撤去訴訟等に対する支援を実施するなどして、地域住民等による暴力団排除活動を支援している。

また、指定暴力団の代表者等の損害賠償責任に関する暴力団対策法の規定を効果的に活用し、暴力団犯罪に係る損害賠償請求訴訟に対する支援を実施するなどして、暴力団の不当要求による被害の防止、暴力団からの被害の救済等に努めている。

注:国家公安委員会から適格暴追センターとして認定を受けた暴追センターが、指定暴力団等の事務所の付近住民等から委託を受けて、自己の名をもって事務所使用差止請求を行うことができる制度

 
暴力追放県市民大会の状況
暴力追放県市民大会の状況

CASE

令和元年9月から同年12月にかけて発生した神戸山口組傘下組織の構成員らによる特殊詐欺事件の被害者6人が、神戸山口組の代表者らに対して損害賠償を求め、令和4年3月、京都地方裁判所に民事訴訟を提訴したところ、同年6月、同代表者らが解決金約300万円を支払うことで和解が成立した。警察では、同訴訟に関し、必要な情報を提供するなど、弁護士会と連携し支援を実施した(京都)。

(4)地方公共団体における暴力団排除に関する条例の運用

各都道府県は、地方公共団体、住民、事業者等が連携・協力をして暴力団排除に取り組む旨を定め、暴力団排除に関する基本的な施策、青少年に対する暴力団からの悪影響排除のための措置、暴力団の利益になるような行為の禁止等を主な内容とする暴力団排除に関する条例の運用に努めている。

各都道府県では、条例に基づき、暴力団の威力を利用する目的で財産上の利益の供与をしてはならない旨の勧告等を実施している。令和4年中における実施件数は、勧告が38件、指導が3件、中止命令が10件、再発防止命令が4件、検挙が14件となっている。

CASE

稲川会傘下組織の組長の男(55)は、神奈川県暴力団排除条例に定める暴力団事務所の開設又は運営の禁止区域において、令和2年10月頃、暴力団事務所を開設し、その頃から令和4年3月までの間、同事務所を運営した。同年5月までに、同男を同条例違反(暴力団事務所の開設及び運営の禁止)で逮捕した(神奈川)。

CASE

住吉会傘下組織の幹部の男(42)は、令和3年6月から令和4年1月にかけて、東京都暴力団排除条例に定める暴力団排除特別強化地域において、社交飲食店を営む者から、用心棒の役務の提供をすることの対償として、現金合計54万円の供与を受けた。同年6月、同男ら2人を同条例違反(特別強化地域における暴力団員の禁止行為・特別強化地域における特定営業者の禁止行為)で検挙した(警視庁)。

(5)暴力団員の社会復帰対策の推進

暴力団を壊滅するためには、構成員を一人でも多く暴力団から離脱させ、その社会復帰を促すことが重要である。警察庁では、令和5年に閣議決定された「第二次再犯防止推進計画」等に基づき、関係機関・団体と連携して、構成員に対する暴力団からの離脱に向けた働き掛けの充実を図るとともに、構成員の離脱・就労、社会復帰等に必要な社会環境及びフォローアップ体制の充実に関する効果的な施策を推進している。

CASE

暴力団からの離脱者が、暴追センターに対して転職に関する相談をしたことから、同人の希望も踏まえつつ、社会復帰アドバイザー(注1)が受入れ賛同企業との面談を行うなど、社会復帰対策協議会(注2)において就労支援を行った。令和4年5月、同人は希望する企業に就労した。

注1:暴力団から離脱した者及び離脱する意思を有する者の円滑な就労を支援するため、暴力団からの円滑な離脱や離脱希望者の生活環境の調整、改善等について知識や経験を有する元警察職員のうちから警視総監又は道府県警察本部長が任命した者

注2:警察、暴追センター、関係機関・団体等から構成される、暴力団を離脱した者の安定した雇用の場の確保のための連絡組織



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