4 サイバーテロ・サイバーインテリジェンスの情勢
重要インフラの基幹システムを機能不全に陥れ、社会の機能を麻痺(ひ)させるサイバーテロ(注)や情報通信技術を用いて政府機関や先端技術を有する企業から機密情報を窃取するサイバーインテリジェンス(サイバーエスピオナージ)が、世界的規模で発生している。
注:重要インフラ(「重要インフラのサイバーセキュリティに係る行動計画」(令和4年6月17日サイバーセキュリティ戦略本部決定)において、情報通信、金融、航空、空港、鉄道、電力、ガス、政府・行政サービス(地方公共団体を含む。)、医療、水道、物流、化学、クレジット及び石油の14分野が指定されている。)の基幹システム(国民生活又は社会経済活動に不可欠な役務の安定的な供給、公共の安全の確保等に重要な役割を果たすシステム)に対する電子的攻撃又は重要インフラの基幹システムにおける重大な障害で電子的攻撃による可能性が高いもの。
(1)サイバーテロの情勢
情報通信技術が浸透した現代社会において、重要インフラの基幹システムに対する電子的攻撃は、インフラ機能の維持やサービスの供給を困難とし、国民の生活や社会経済活動に重大な被害をもたらすおそれがある。海外では、電力会社がサイバーテロの被害に遭い、広範囲にわたって停電が発生するなど国民に大きな影響を与える事案が発生している。
(2)サイバーインテリジェンスの情勢
近年、情報を電子データの形で保有することが一般的となっている中で、軍事技術への転用も可能な先端技術や、外交交渉における国家戦略、新型コロナウイルス感染症に関連する研究等の機密情報の窃取を目的としたサイバーインテリジェンスの脅威が世界各国で問題となっている。また、我が国に対するテロの脅威が継続していることを踏まえると、現実空間でのテロの準備行為として、重要インフラ事業者等の警備体制等の機密情報を窃取するためにサイバーインテリジェンスが行われるおそれもある。我が国においても、不正プログラムや不正アクセスにより、機密情報が窃取された可能性のあるサイバーインテリジェンスが発生している。
MEMO 学術関係者・シンクタンク研究員等を標的としたサイバーインテリジェンスに対する注意喚起
近年、日本国内の学術関係者、シンクタンク研究員等を標的として、講演依頼や取材依頼等を装ったメールのやりとりをする中で不正なプログラムを実行させ、当該人物のやりとりするメールやコンピュータ内のファイルの内容の窃取を試みるサイバーインテリジェンスが行われた例が多数確認されている。
こうしたサイバーインテリジェンスの中で、一定の共通点を有する事案を把握するに至ったところ、情報窃取の被害の発生が深く懸念されることに鑑み、令和4年11月、警察庁は、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC(注))と連名で注意喚起を行った。
注:National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurityの略

注意喚起文の一部