7 良好な生活環境の保持
(1)風俗営業等の状況
警察では、風営適正化法に基づき、風俗営業等に対して必要な規制を行っている。
① 風俗営業の状況
風俗営業の許可数(営業所数)は、近年、継続的に減少している。

② 性風俗関連特殊営業の状況
性風俗関連特殊営業の状況についてみると、近年、店舗型性風俗特殊営業の届出数は、継続的に減少し、無店舗型性風俗特殊営業及び映像送信型性風俗特殊営業の届出数は、継続的に増加している。

③ 深夜酒類提供飲食店営業の状況

④ 特定遊興飲食店営業の状況
特定遊興飲食店営業の許可数(営業所数)は、近年、継続的に増加している。

(2)売春事犯及び風俗関係事犯の現状
① 売春事犯
売春事犯の検挙件数及び検挙人員はいずれも増減を繰り返している。最近では、出会い系サイト(注)を利用して、売春の周旋をする目的で、人を売春の相手方となるように誘引する事犯や、マッサージ店を仮装して、不特定多数の男性客を相手に売春をさせる事犯がみられる。
注:面識のない異性との交際(以下「異性交際」という。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれを伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供するウェブサイト等

CASE
マッサージ店を営む台湾人の女(64)は、令和4年1月から同年6月にかけて、同店従業員であるタイ人の女性に対し、不特定の男性客を売春の相手方として紹介した。同年7月までに、同台湾人の女を売春防止法違反(周旋・場所提供業)等で、従業員の女2人を入管法違反(不法滞在・資格外活動)で逮捕した(栃木)。
② 風俗関係事犯
風営適正化法による検挙件数及び検挙人員は、近年減少傾向にある。
また、わいせつ事犯に関しては、インターネットを利用して、わいせつな動画を販売する事犯やわいせつな画像情報が記録されたDVD等を販売する事犯がみられる。
さらに、賭博事犯に関しては、いわゆるオンラインカジノを利用した賭博事犯がみられるほか、店舗の内外に複数の監視カメラを設置する、見張り役の従業員を常時配置する、身分確認を行って常連客以外の客を排除するなど、警察の取締りから逃れるための対策が巧妙化している。
オンラインカジノを利用した賭博事犯のうち、自宅のパソコン等からアクセスして賭博を行うものについては、アクセス数の大幅な増加及びこれに伴う依存症の問題が強く指摘されており、警察では、取締りを推進するとともに、広報啓発用ポスターや警察庁ウェブサイト等を活用して、オンラインカジノを利用して賭博を行わないよう周知している。



オンラインカジノ違法性の広報啓発ポスター
CASE
インターネットカジノ店従業員の男(32)らは、令和3年12月から令和4年2月にかけて、不特定多数の客に対し、店内に設置したパソコンを使用して、インターネットを利用したゲームによる賭博をさせていた。同年4月までに、従業員ら6人を常習賭博罪で逮捕し、1人を単純賭博罪で検挙した(愛知)。
(3)人身取引事犯等への対策
① 人身取引事犯の検挙・保護の状況
警察では、令和4年に政府が策定した「人身取引対策行動計画2022」等に基づき、出入国在留管理庁等の関係機関と連携し、水際での取締りや悪質な雇用主、ブローカー等の取締りを強化し、被害者の早期保護及び国内外の人身取引(性的サービスや労働の強要等)の実態解明を図っている。また、関係国の大使館、被害者を支援する民間団体等と緊密な情報交換を行っているほか、被害者の早期保護のため、警察等に情報提供や被害申告をするよう呼び掛けるリーフレットを複数の言語で作成し、これをウェブサイトに掲示するとともに、関係機関等を通じて周知するなどの取組を行っている。
令和4年中の人身取引事犯の検挙人員は37人であった。また、警察で保護した人身取引事犯の被害者は46人で、その国籍については、日本が約9割を占めており、日本人被害者の年齢は、18歳未満が約8割を占めていた。



人身取引事犯の被害者向けリーフレット
CASE
無職の女(33)らは、知人女性を自宅に住まわせ、令和3年5月から同年11月にかけて、同知人女性に不特定多数の男性客を相手に対償を受けて売春させることを業とした。令和4年2月、同無職の女らを売春防止法違反(売春をさせる業)で逮捕した(警視庁)。
② アダルトビデオ出演被害問題への対策
アダルトビデオ出演被害問題に対し、警察では、各都道府県警察で指定された統括責任者を中核として、各種法令を適用した厳正な取締り、被害防止のための広報啓発、相談体制の充実等を推進している。
CASE
会社役員の男(50)は、性行為映像制作物を制作するに際し、令和4年9月、性行為映像制作物の出演を承諾した出演者らに対し、出演契約書等を交付等しなかった。同年12月、同男をAV出演被害防止・救済法違反(出演契約書等の不交付等)で逮捕した(警視庁)。
(4)銃砲等及び刀剣類の適正管理と危険物対策
① 銃砲等及び刀剣類の適正管理
令和4年末現在、銃刀法に基づき、都道府県公安委員会から8万6,499人が、17万4,133丁の猟銃及び空気銃の所持許可を受けている。令和4年中、申請を不許可等とした件数は25件、所持許可を取り消した件数は41件であった。同年3月、クロスボウの所持等に関する規制の創設を内容とする銃刀法の一部を改正する法律が施行され、令和4年末現在、107人が152本のクロスボウの所持許可を受けた。また、警察において所持許可の申請をする予定のないクロスボウの回収に努めた結果、経過期間が終了する同年9月14日までに、7,463本のクロスボウを回収した。さらに、猟銃等の事故及び盗難を防止するため、毎年一斉検査を行うとともに、講習会等を通じて適正な取扱いや保管管理の徹底について指導を行っている。
警察では、銃刀法を厳正に運用し、銃砲等及び刀剣類の所持許可の審査と行政処分を的確に行って不適格者の排除に努めるなど、銃砲等及び刀剣類による事件・事故の未然防止に努めている。



② 危険物対策
火薬類や特定病原体等、放射性物質といった危険物の運搬に当たっては、火薬類取締法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律、放射性同位元素等の規制に関する法律、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律等の規定に基づき、都道府県公安委員会にその旨を届け出ることとされている。
警察では、これらの危険物が安全に運搬されるよう、関係事業者に対して事前指導や指示等を行うとともに、これらの危険物の取扱場所への立入検査等により、その盗難、不正流出等の防止に努めている。

(5)環境事犯対策
① 廃棄物事犯(注)
令和4年中の廃棄物事犯の検挙事件数の約5割を、廃棄物の不法投棄事犯が占めている。
警察では、環境行政部局との人的な交流や情報交換を引き続き行うなどし、廃棄物事犯の早期発見・早期検挙に努めている。
注:廃棄物処理法違反に係る事犯

CASE
不用品回収会社の代表取締役の男(37)らは、令和2年10月から令和3年9月にかけて、30回にわたり、一般廃棄物の収集業の許可を受けないで、冷蔵庫等を代金合計約1,400万円で収集するなどした。令和4年2月までに、同男ら1法人8人を廃棄物処理法違反(無許可収集運搬業)等で検挙した(愛知)。
② 動物・鳥獣関係事犯(注1)
令和4年中の動物・鳥獣関係事犯の検挙事件数のうち、犬、猫等を殺傷するなどの動物虐待事犯(注2)は166事件(前年比4事件(2.4%)減少)であり、大幅に増加した前年とほぼ同数であった。また、違法に捕獲等した鳥獣を飼養するなどの鳥獣保護管理法違反や、希少動物を違法に取引するなどの種の保存法違反等も、引き続き検挙されている。
注1:動物愛護管理法、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律違反等に係る事犯
注2:動物愛護管理法第44条違反に係る事犯

CASE
派遣社員の男(49)らは、令和4年7月、4回にわたり、空き地等に犬27匹を遺棄した。同年10月までに、同男ら2人を動物愛護管理法違反(愛護動物の遺棄)で検挙した(福岡)。
(6)探偵業の状況
令和4年中の探偵業法での検挙件数は3件、行政処分件数は16件(営業廃止0件、営業停止0件及び指示処分16件)であった。警察では、探偵業法に基づき、探偵業者(注)の業務実態を把握し、違法行為に対しては厳正に対処するとともに、業界の全国組織である一般社団法人日本調査業協会や全国調査業協同組合等との連携の下、研修会等を通じて、探偵業務の運営の適正化を図っている。
注:探偵業の届出数(営業所数)は6,970件(令和4年末現在)