トピックス

トピックスIV 通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶

(1)交通事故情勢

最近5年間における児童(小学生)の状態別死者・重傷者数をみると、歩行中が59.0%を占め、歩行中死者・重傷者の約3分の1が登下校中となっている。

こうした中、令和3年(2021年)6月28日、千葉県八街市において、下校中の小学生の列にトラックが衝突して5人が死傷する痛ましい交通事故が発生し、その後の警察の捜査で、トラックの運転手からは基準値以上のアルコールが検出されたことが明らかになった。この事故を受けて、同年8月4日、「交通安全対策に関する関係閣僚会議」が開催され、「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」(以下「緊急対策」という。)が決定されており、警察としても各種対策に強力に取り組んでいるところである。

 
図表IV-1 児童(小学生)の状態別死者・重傷者数(平成29年(2017年)~令和3年の合計) 図表IV-2 児童(小学生)歩行中の通行目的別死者・重傷者数(平成29年~令和3年の合計)
図表IV-1 児童(小学生)の状態別死者・重傷者数(平成29年(2017年)~令和3年の合計) 図表IV-2 児童(小学生)歩行中の通行目的別死者・重傷者数(平成29年~令和3年の合計)
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(2)通学路等における交通安全の確保

① 通学路における合同点検の実施

緊急対策を踏まえ、警察では、教育委員会、学校、道路管理者等と連携して、これまでの通学路点検では危険箇所として取り上げられなかった、見通しの良い道路や幹線道路の抜け道になっている道路等、車の速度が上がりやすい箇所や大型車の進入が多い箇所等の新たな観点も踏まえた合同点検を実施した。

合同点検で抽出した対策必要箇所については、速度規制や登下校時間帯に限った車両通行止め等によるソフト面での対策に加え、信号機、横断歩道等の交通安全施設等の整備等によるハード面での対策を適切に組み合わせるなど、地域の実情に対応した、効果的な対策を検討し、可能なものから速やかに実施している。

② ゾーン30プラスの整備の推進

警察では、「ゾーン30」(注1)の整備を推進しており、令和3年度末までに全国で4,186か所を整備した。

令和3年8月からは、最高速度30キロメートル毎時の区域規制とハンプ(注2)等の物理的デバイスとの適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域を、「ゾーン30プラス」として設定し、道路管理者と緊密に連携しながら、生活道路における人優先の安全・安心な通行空間の整備の更なる推進を図ることとしている。

注1:区域内における速度を規制し、通過交通の抑制・排除を図るもの。

注2:車両の低速走行等を促すための道路に設ける盛り上がり(凸部)

 
「ゾーン30プラス」の整備イメージ
「ゾーン30プラス」の整備イメージ
③ 歩行者の安全確保のための交通安全教育・指導取締り

登下校時、歩行中小学生の死者・重傷者のうち約8割が横断中であることを踏まえ、横断歩行者の安全確保に向けて、横断する意思を明確に運転者に伝えるなど、歩行者に対して自ら安全を守るための交通行動を促す交通安全教育等を推進するとともに、歩行者被害事故の減少を目標とした横断歩行者等妨害等違反の指導取締りを推進しているほか、可搬式速度違反自動取締装置を活用して子供の通行が多い生活道路等における取締りを推進している。

(3)飲酒運転の根絶

① 安全運転管理者の確実な選任・飲酒運転の根絶に向けた使用者対策の強化

緊急対策において、自動車を一定数以上保有する使用者に義務付けられている安全運転管理者について未選任事業所を一掃するとともに、乗車前後におけるアルコール検知器を活用した酒気帯びの有無の確認を促進するなど、安全運転管理者業務の内容の充実を図り、飲酒運転の根絶に向けた使用者対策を強化することとされた。

これを踏まえ、警察では、安全運転管理者の未選任事業所の一掃に向けて、安全運転管理者が確実に選任されるよう、関係機関と連携し、選任義務等の周知を図っているほか、自動車保管場所証明業務との連携等により未選任事業所の効果的・効率的な把握に努めたり、安全運転管理者の選任状況を都道府県警察のウェブサイト上で公開して選任を促進したりするなどの取組を進めている。

また、使用者対策の強化に向けて、道路交通法施行規則の一部を改正し、安全運転管理者の行うべき業務として、運転者の運転前後における酒気帯びの有無の確認等の規定を新たに設け、令和4年4月1日から順次施行することとしたところである。

警察では、引き続き安全運転管理者の確実な選任に向けた環境整備を進めるとともに、安全運転管理者に対する講習の機会の活用等により、酒気帯びの有無の確認等に関する義務の徹底を図るなどの使用者対策等を着実に推進し、飲酒運転の根絶に向けて一層強力に取り組んでいくこととしている。

② 飲酒運転の根絶に向けた交通安全教育と広報啓発活動等の推進

警察では、飲酒運転の危険性や飲酒運転による交通事故の実態等について積極的に広報するとともに、飲酒が運転等に与える影響について理解を深めるため、映像機器や飲酒体験ゴーグルを活用した参加・体験型の交通安全教育を推進している。

飲酒運転根絶の広報啓発をより積極的に展開するため、交通ボランティアや交通安全関係団体、酒類製造・販売業、酒類提供飲食業等の関係業界と連携して、一般財団法人全日本交通安全協会等が推進している「ハンドルキーパー運動」(注)への参加を広く国民に呼び掛けるなど、関係機関・団体等と連携して「飲酒運転を絶対にしない、させない」という国民の規範意識の更なる向上を図っている。

注:自動車によりグループで酒類提供飲食店に来たときには、その飲食店の協力を得て、グループ内で酒を飲まず、他の者を自宅まで送る者(ハンドルキーパー)を決め、飲酒運転を根絶しようという運動

③ 飲酒運転の根絶に向けた取締りの一層の強化

飲酒運転の根絶に向け、飲酒運転をした運転者のみならず、車両等の提供者、飲酒場所、同乗者、飲酒の同席者等に対する徹底した捜査を行い、車両等の提供、酒類の提供及び要求・依頼しての同乗や教唆行為について、確実な立件に努めている。

また、事業活動に関して行われた飲酒運転について、運転者の取締りにとどまらず、飲酒運転の下命・容認をしていた自動車の使用者等(注)に対する責任追及を徹底している。

注:使用者のほか、安全運転管理者その他自動車の運行を直接管理する地位にある者を含む。

 
飲酒運転取締りの検問実施状況
飲酒運転取締りの検問実施状況
 
図表特IV-3 飲酒運転の取締り件数(令和3年)
図表特IV-3 飲酒運転の取締り件数(令和3年)
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