第3節 国際的な警察活動
(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携
① ASEAN加盟国、G7各国等との連携
警察では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野において、外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。
令和3年(2021年)9月には、第11回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注1)及び第6回日・ASEAN国際犯罪閣僚会議が開催され、サイバー犯罪対策等について議論した。また、同月には英国において、G7内務・安全担当大臣会合が開催され、我が国からは国家公安委員会委員長が出席したほか、同年4月、11月及び令和4年(2022年)3月には、G7ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、国際組織犯罪対策やテロ対策等について議論した。
また、平成30年(2018年)12月に警察庁とEUROPOL(注2)との間において策定した協力関係構築に係る実務取決めに基づき、EUROPOLへの連絡担当官を派遣しており、EUROPOLに加え、EU加盟国や連絡担当官を派遣している他の国との二国間協力の強化を図っている。
注1:ASEAN(Association of Southeast Asian Nations:東南アジア諸国連合)加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議
注2:121頁参照(第3章)

第11回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議の様子
② 二国間等の連携
警察では、テロや組織犯罪等の国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関等との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。令和3年7月には、国家公安委員会委員長が、ベトナム公安大臣と会談し、2020年東京大会への協力依頼等を行った。また、同年中も、警察庁幹部が各国駐日大使等と会談を行うなど、治安分野における外国政府・機関等との関係深化を図った。

国家公安委員会委員長とベトナム公安大臣による会談の様子
(2)治安に関係する国際約束の締結
刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期すとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。このほか、米国との間では、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めたPCSC協定(注)を締結している。
注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation in Preventing and Combating Serious Crime)の略称
(3)国際協力の推進
① 海外の警察に対する支援
警察庁では、我が国の警察の知見や特質を生かせる分野において、外務省やJICAと協力し、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた海外の警察に対する支援を行っている。
ア インドネシア国家警察改革支援プログラム
平成13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。平成24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、現場鑑識活動等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。令和3年中は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により一時帰国していた4名の専門家が再渡航し、現地での支援活動を再開した。
MEMO 新型コロナウイルス感染症の影響下での活動
インドネシアでは、依然として新型コロナウイルス感染症の流行が収束を迎えておらず、専門家の支援活動も制限せざるを得ない状況であった。こうした中でも、再渡航した専門家は、オンラインを駆使し、研修や意見交換を実施するなど、感染予防に最大限に配意した取組を行っている。

インドネシアでの鑑識研修の様子
イ 研修員の受入れ
警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。令和3年中は、3課目の研修をオンラインで実施し、アジア、アフリカ、中南米等の各国から、警察幹部を含む54人の研修員を受け入れた。
② 国際緊急援助活動
我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察も国際緊急援助隊の救助チームの一員として国際緊急援助活動を行っている。警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年(1987年)以降、延べ290人の隊員を延べ16の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。
(4)国際的な警察活動に関する基盤整備
警察では、警察大学校国際警察センターにおいて、言語別の語学研修や国際捜査、国際協力に関する研修を実施することなどにより、通訳人となる警察職員や国際捜査、国際協力に知見を有する警察職員を育成しているほか、各都道府県警察においても、民間の通訳人の確保や外国の文化、宗教等に関する理解を促進するための研修に積極的に取り組むなどして、国際的な警察活動に関する基盤整備を推進している。

兵庫県警察での通訳人への研修の様子