第4節 犯罪収益対策
1 犯罪収益移転防止法に基づく活動
暴力団等の犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益の移転を防止するとともに、これを確実に剥奪することが重要である。警察では、犯罪収益移転防止法(注1)、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法を活用し、関係機関、事業者、外国のFIU(注2)等と協力しながら、総合的な犯罪収益対策を推進している。
注1:犯罪収益移転防止法の概要については、28頁参照(トピックスII)
注2:28頁参照(トピックスII)
(1)犯罪収益移転防止法の適切な履行を確保するための措置
国家公安委員会では、犯罪収益移転防止法に基づいて、毎年、犯罪収益の移転に係る手口等に関する調査及び分析を行った上で、特定事業者等が行う取引の種別ごとに、当該取引による犯罪収益の移転の危険性の程度等、当該調査及び分析の結果を記載した犯罪収益移転危険度調査書を作成し、公表している。
また、国家公安委員会では、関係機関と連携し、犯罪収益移転防止法に基づいて、顧客等の本人確認、疑わしい取引の届出等を行う特定事業者に対する研修会等を実施しているほか、特定事業者が犯罪収益移転防止法上の義務に違反していると認めた場合には、当該特定事業者に対して報告を求めるなどの必要な調査を行うとともに、当該特定事業者を所管する行政庁に対して、是正命令等を行うべき旨の意見陳述を行っている。
(2)疑わしい取引の届出
犯罪収益移転防止法に定める疑わしい取引の届出制度により特定事業者がそれぞれの所管行政庁に届け出た情報は、国家公安委員会が集約して整理・分析を行った後、都道府県警察や検察庁をはじめとする捜査機関等に提供され、各捜査機関等において、マネー・ローンダリング事犯の捜査等に活用されている。
疑わしい取引の届出の年間受理件数は、図表4-21のとおりであり、おおむね増加傾向にある。
図表4-21 疑わしい取引の届出状況の推移(平成29年(2017年)~令和3年(2021年))

図表4-22 都道府県警察の捜査において活用された疑わしい取引に関する情報の件数の推移(平成29年~令和3年)
