第4章 組織犯罪対策

第2節 薬物銃器対策

1 薬物情勢

令和3年(2021年)中の薬物事犯の検挙人員は1万3,862人と、引き続き高い水準にあり、我が国の薬物情勢は依然として厳しい状況にある。薬物は、乱用者の精神や身体をむしばむばかりでなく、幻覚、妄想等により、乱用者が殺人、放火等の凶悪な事件や重大な交通事故等を引き起こすこともあるほか、薬物の密売が暴力団等の犯罪組織の資金源となることから、その乱用は社会の安全を脅かす重大な問題である。

 
図表4-8 薬物事犯の検挙人員(令和3年)
図表4-8 薬物事犯の検挙人員(令和3年)
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(1)犯罪組織等の動向

① 暴力団による薬物事犯

令和3年中の暴力団構成員等による薬物事犯の検挙人員は3,892人と、前年より495人(11.3%)減少した。このうち、覚醒剤事犯の検挙人員は3,051人と、前年より526人(14.7%)減少したものの、覚醒剤事犯の総検挙人員の39.0%を占めていることから、依然として覚醒剤事犯に暴力団が深く関与していることがうかがわれる。また、暴力団構成員等による大麻事犯の検挙人員は789人と、前年より38人(5.1%)増加した。このうち、大麻の営利目的栽培事犯の検挙人員は28人と、前年より3人(12.0%)増加するとともに、大麻の密売関連事犯(注)の検挙人員は71人と、前年より18人(34.0%)増加しており、暴力団の大麻の密売関連事犯等への関与がうかがわれる。

注:営利目的所持、営利目的譲渡し及び営利目的譲受け

② 来日外国人による薬物事犯

令和3年中の来日外国人による薬物事犯の検挙人員は714人と、前年より189人(36.0%)増加した。このうち、営利目的輸入事犯の検挙人員は69人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが50.7%(35人)を占めているほか、密売関連事犯の検挙人員は60人であり、国籍・地域別でみると、ベトナムが50.0%(30人)を占めている。

(2)薬物密輸入事犯の検挙状況

令和3年中の薬物密輸入事犯の検挙件数は212件と、前年より6件(2.8%)減少し、検挙人員は268人と、前年より33人(14.0%)増加した。

令和3年中は、薬物密輸入事犯の検挙人員は前年に比べ増加した一方、検挙件数は減少したが、薬物事犯全体の検挙状況に大幅な変動はみられず、薬物に対する根強い需要が存在しているものと考えられる。

なお、覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移は、図表4-9のとおりである。

 
図表4-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成24年(2012年)~令和3年)
図表4-9 覚醒剤密輸入事犯の検挙状況の推移(平成24年(2012年)~令和3年)
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(3)薬物事犯別の検挙状況

① 覚醒剤事犯

令和3年中、覚醒剤事犯の検挙人員は前年より減少したが、全薬物事犯の検挙人員の56.4%を占めている。また、押収量は688.8キログラムと、前年より251.6キログラム増加した。覚醒剤事犯の特徴としては、検挙人員のうち約4割を暴力団構成員等が占めていることのほか、30歳代以上の検挙人員が多いことや、他の薬物事犯と比べて再犯者の占める割合が高いことが挙げられる。

② 大麻事犯

大麻事犯の検挙人員は8年連続で増加し過去最多となっており、覚醒剤事犯に次いで検挙人員の多い薬物事犯である。近年では、面識のない者同士がSNSを通じて連絡を取り合いながら大麻の売買を行う例もみられる。大麻事犯の特徴としては、他の薬物事犯と比べて、検挙人員のうち初犯者や20歳代以下の若年層の占める割合が高いことが挙げられる。

CASE

住吉会傘下組織の構成員の男(41)らは、令和2年11月から令和3年9月にかけて、SNSを利用して大麻の密売等をした。令和4年3月までに同男ら19人を大麻取締法違反(営利目的栽培、営利目的譲渡等)等で逮捕するとともに、同男らから大麻を購入するなどした客15人を大麻取締法違反(所持等)等で検挙した(警視庁、埼玉及び千葉)。

 
押収された大麻草
押収された大麻草
 
図表4-10 各種薬物事犯の検挙状況の推移(平成29年~令和3年)
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