第4章 組織犯罪対策

5 準暴力団等の動向と警察の取組

(1)準暴力団等(注)の動向と特徴

暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、繁華街・歓楽街等において、集団的又は常習的に暴行、傷害等の事件を起こしている例がみられるほか、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動を活発化させている。こうした集団の中には、暴力団のような明確な組織構造は有しないが、犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在しており、警察では、こうした集団を暴力団に準ずる集団として「準暴力団」と位置付けている。

注:準暴力団及びこれに準ずる集団

CASE

暴走族の元構成員等を中心とする集団のメンバーの男(35)らは、令和3年7月、東京都内在住の男性宅に押し入り、警棒等で男性の頭部等を殴打し、さらに刃物で腕を切り付けるなどの暴行を加えて全治約4週間の傷害を負わせるとともに、同男性に対し、「早く金を払えよ」などと脅して現金を要求した。さらに、携帯電話を利用して、同男性の母親に対し、「あんたが金を払わないと、あんたは息子の死体を片付けることになるぞ」などと告げた上、同男性の悲鳴等を聞かせるなどして脅し、現金を要求した。同年9月、同男ら4人を強盗致傷罪等で逮捕した(警視庁)。

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建設作業員の男(23)及び同男をリーダーとする集団のメンバーらは、令和2年11月、親族等を装って高齢者に電話をかけ、「会社に450万円の損害を出してしまい、弁償しないといけないからなんとかしてほしい」旨のうそを言って、現金100万円をだまし取った。令和3年8月までに、同男ら6人を詐欺罪で逮捕した(千葉)。

準暴力団等は、犯罪ごとにメンバーが離合集散を繰り返すなど、そのつながりが流動的である点で、明確な組織構造を特徴とする暴力団と異なる。準暴力団等には、暴走族の元構成員や地下格闘技団体の元選手等を中核とするものがみられるほか、暴力団構成員や元暴力団構成員がメンバーとなっている場合もある。

準暴力団等の中には、特殊詐欺や組織窃盗等の違法な資金獲得活動によって蓄えた資金を、更なる違法活動や自らの風俗営業等の事業資金に充てるなど、活発な資金獲得活動を行っていることがうかがわれる集団が数多くみられる。また、資金の一部を暴力団に上納するなど、暴力団と関係を持つ実態も認められるほか、暴力団構成員が準暴力団等と共謀して犯罪を行っている事例もあり、このような準暴力団等の中には、暴力団と準暴力団等との結節点の役割を果たす者が存在するとみられる。

 
図表4-7 準暴力団等の特徴
図表4-7 準暴力団等の特徴

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暴力団と密接に関係し、その資金源となっている状況がうかがわれる集団のメンバーの男A(23)らは、令和3年7月、埼玉県内の商業施設駐輪場にバイクを停車させていた男性らに因縁をつけ、「金を払うか。ぶっ飛ばされるか」などと言い、現金20万円を脅し取った。また、稲川会傘下組織の構成員の男B(23)は、Aらが脅し取った現金20万円のうち10万円について、恐喝による犯罪収益であることを知りながら受け取った。同年8月、Aら3人を恐喝罪で逮捕するとともに、同年9月、Bを組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)で逮捕した(埼玉)。

(2)警察の取組

警察では、準暴力団等の動向を踏まえ、繁華街・歓楽街対策、特殊詐欺対策、組織窃盗対策、暴走族対策、少年非行対策等の関係部門間における連携を強化し、準暴力団等に係る事案を把握するなどした場合の情報共有を行い、部門の垣根を越えた実態解明の徹底に加え、あらゆる法令を駆使した取締りの強化に努めている。

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元暴力団構成員等を中心とする集団のメンバーの男(39)らは、令和2年7月、国の持続化給付金制度を利用して同給付金の名目で現金をだまし取ろうと考え、同給付金申請ページに接続し、虚偽の事業内容及び事業収入を入力するなどして同給付金の申請をし、現金200万円をだまし取った。令和3年6月までに、同男ら7人を詐欺罪で検挙した(新潟)。

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出資法違反(高金利)等の事件を起こしていた集団のメンバーの男(33)らは、令和3年8月から同年9月にかけて、沖縄県内の行楽地において、保健所長の許可を受けないで生肉を調理し提供するなどの飲食店営業を営むとともに、沖縄県公安委員会に届出をせずに不特定多数の客に水上オートバイを賃貸するなどの事業を営んだ。同月、同男ら2人を食品衛生法違反(無許可営業)で逮捕するとともに、同年10月に同男を沖縄県水難事故の防止及び遊泳者等の安全確保等に関する条例違反(無届営業)等で検挙するなどした(沖縄)。

MEMO 準暴力団等の排除に向けた取組

静岡県警察では、同県内における準暴力団等のメンバーによる殺人事件の発生等を受けて、繁華街から暴力団や準暴力団等を排除するため、同県弁護士会と連携し、令和3年11月、飲食店等を対象として個別訪問やみかじめ料等に関するアンケート調査を実施するなどした。

これらの活動により、暴力団等による潜在する被害を掘り起こし、その根絶を促すなど、地域における暴力団等の排除活動への適切な支援を行っている。

 
繁華街の飲食店等を訪問する捜査員(東京新聞)
繁華街の飲食店等を訪問する捜査員(東京新聞)

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逮捕監禁等の事件を起こしていた集団のメンバーの男(38)らは、令和3年3月、静岡県内の繁華街にあるビルの出入口付近において、殺意をもって、知人に対して刃物を突き刺して殺害した。同年4月、同男ら2人を殺人罪で逮捕するとともに、同年5月までに同集団のメンバーの男ら6人を証拠隠滅罪等で逮捕した(静岡)。



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