特集1 東日本大震災から10年を迎えて

3 今後の大規模災害を見据えた更なる取組の強化

近年、豪雨等の自然災害が激甚化・頻発化しており、さらに、東日本大震災を超える甚大な被害が想定(注)される首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模地震の発生も切迫しているとされるほか、火山噴火をはじめとする多様な災害にも備えなければならない。

今後は、東日本大震災の対応において得られた教訓を踏まえた災害対策を引き続き進めるとともに、大規模な被害が生じ得る災害の発生を見据え、取組を更に強化していくこととしている。

注:中央防災会議の下に設置されたワーキンググループが算出した被害想定。同ワーキンググループによれば、首都直下地震では最大約2万3,000人、南海トラフ地震では最大約32万3,000人の人的被害が想定されている。

 
南海トラフ地震における震度分布
南海トラフ地震における震度分布(注1)
 
首都直下地震における震度分布
首都直下地震における震度分布(注2)

注1:「南海トラフの巨大地震モデル検討会(第2次報告)」(平成24年8月)より抜粋。強震動生成域を、可能性がある範囲で最も陸域側(プレート境界面の深い側)の場所に設定した想定であり、揺れによる被害が最も大きいとされる。

注2:「首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」(平成25年12月)より抜粋。被災量が最も大きい都心南部直下地震を想定したもの

(1)全国警察の機動的展開能力の向上

全国の警察力を被災地へ迅速に展開し、救出救助活動を行うための取組を強化するため、令和3年2月、警察用航空機を災害対応における警察機動力の中核として位置付け、機動隊を中心とする救出救助部隊との連携の下、その能力を最大限発揮させることを目的とした制度改正を行った。あわせて、全国警察の航空隊を警備部門に移管し、災害対処等における指揮系統を統合することにより、救出救助部隊との連携強化や災害発生時を想定した訓練の充実をより一層推進することとした。

また、大規模な災害が発生するおそれがある場合には、必要に応じ、広域緊急援助隊や広域警察航空隊を被害発生が予想される地域等に前もって待機させるなど、効果的な部隊運用を図っている。

 
図表特1-4 警察用航空機に関する制度改正の概要
図表特1-4 警察用航空機に関する制度改正の概要
(2)ICT等先端技術の活用による部隊指揮・運用能力等の向上

警察では、ICTをはじめとする先端技術を最大限活用し、部隊の指揮・運用を効率的に行うための取組を強化している。

例えば、大規模災害発生時には、被災地周辺において官民双方から多数の航空機が飛行することとなる。警察では、警察用航空機にJAXA(注)が開発した「災害救援航空機情報共有ネットワーク(D-NET)」システムを導入し、災害発生時に、活動中の警察用航空機と災害警備本部との間で、現場の被災情報や航空機の飛行情報等を衛星通信を介して電子地図上で共有し、災害警備本部からの指示等を瞬時に伝達するなど、各航空部隊への任務付与を最適化するとともに、警察用航空機の安全な活動を確保するための取組を進めている。

注:Japan Aerospace Exploration Agency(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)の略

 
D-NETシステムを活用した訓練(JAXA提供)
D-NETシステムを活用した訓練(JAXA提供)
 
D-NETシステムにおける情報の表示(JAXA提供)
D-NETシステムにおける情報の表示(JAXA提供)
(3)危機管理体制の不断の見直し

警察では、これまで実施してきた災害対策のための取組を更に強化するだけではなく、災害や防災に関する新たな知見を踏まえ、これまでの取組を不断に見直していくほか、災害に関する危機管理体制の点検及び構築を日頃から継続的に推進することで、今後発生が懸念されるあらゆる大規模災害を見据え、災害対処能力を一層向上していくこととしている。



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