第4章 安全かつ快適な交通の確保

5 ITSの推進と自動運転の実現に向けた取組

(1)ITS(注1)の推進

① UTMS(注2)の開発・整備によるITSの推進

警察では、最先端の情報通信技術等を用いて交通管理の最適化を図るため、光ビーコン等の機能を活用したUTMSの開発・整備を行うことによりITSを推進し、安全・円滑かつ快適で環境負荷の低い交通社会の実現を目指している。

注1:Intelligent Transport Systems(高度道路交通システム)の略

注2:Universal Traffic Management Systems(新交通管理システム)の略

 
図表4-43 主なUTMSの概要(令和2年度末現在)
図表4-43 主なUTMSの概要(令和2年度末現在)
② ITSに関する国際協力の推進

警察では、令和2年(2020年)11月、東京で開催されたSIP-adus Workshop2020(注)において、各種発表を通じてUTMSの先進的な技術を紹介するとともに、各国とITSに関して情報交換を行うなどして協力関係を深めた。

注:自動運転社会の実現に向けて、自動運転の研究開発・社会実装等とともに国際連携の推進を目的とした国際会議

MEMO 新たな交通管制の構築に向けた取組

令和2年7月に策定された「官民ITS構想・ロードマップ2020」では、令和12年までに世界一安全で円滑な道路交通社会を構築することや、世界最先端のITS・自動運転を構築することが目標として掲げられている。

そのため、警察庁においても、自動車の運転支援による安全で円滑な交通環境及び高度な自動運転の実現に向け、AIや、第5世代移動通信システム(5G)を活用した信号制御に係る調査研究に取り組むなど、新たな交通管制システムの構築について検討を進めている。

(2)自動運転の実現に向けた取組

自動運転の技術は、交通事故の削減や渋滞の緩和等に有効なものと考えられ、警察としても、我が国の道路交通環境に応じた自動運転が早期に実用化されるよう、その進展を支援すべく積極的に取組を進めている。

① 法制度面を含む各種課題の検討

令和2年4月、自動運行装置(注1)を使用する運転者の義務や作動状態記録装置(注2)による記録に関する規定の整備等を内容とする道路交通法の一部を改正する法律が施行された。

これにより、SAEレベル3(注3)の自動運転について、国土交通大臣が付する自動運行装置の使用条件を満たさなくなる場合等には、運転者が自動運行装置から運転操作を確実に引き継ぐことが求められる。運転者はこれに適切に対処することができる必要があり、警察では、自動運行装置を使用した運転上の留意事項等について広報啓発に努めている。

また、令和2年度には、「自動運転の実現に向けた調査検討委員会」を開催し、従来の運転者の存在を必ずしも前提としない場合における交通ルールの在り方について検討を行った。

注1:プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な装置であって、当該装置ごとに国土交通大臣が付する条件(使用条件)で使用される場合において、自動車を運行する者の操縦に係る認知、予測、判断及び操作に係る能力の全部を代替する機能(以下「代替機能」という。)を有するもの

注2:自動運行装置の代替機能の作動状態の確認に必要な情報を記録するための装置

注3:「自動運転に係る制度整備大綱」等で採用されている、SAE(Society of Automotive Engineers)InternationalのJ3016における運転自動化レベルのうち、システムが全ての動的運転タスク(操舵、加減速、運転環境の監視、反応の実行等、車両を操作する際にリアルタイムで行う必要がある機能)をシステムが機能するよう設計されている特有の条件内で実施するが、システムの作動継続が困難な場合は、システムの介入要求等に対して、運転者の適切な応答が期待されるもの

 
広報啓発の実施状況
広報啓発の実施状況
② 国際的な議論への参画

我が国が締約しているジュネーブ条約(注1)では、車両には運転者がいなければならないことなどが規定されている一方で、システムが完全に運転操作を実施する自動運転もあり得ることなどから、近年、自動運転と国際条約との関係の整理等に関し、国連経済社会理事会の下の欧州経済委員会内陸輸送委員会に置かれたWP.1(注2)において議論が行われており、警察庁としても、これら議論に参画している。また、令和3年(2021年)7月に設置される、自動運転について国際条約を補完するための新たな法的文書の作成に関する専門家グループにも参加することとしている。

注1:昭和24年(1949年)にスイス・ジュネーブにおいて作成された道路交通に関する条約の通称

注2:Global Forum for Road Traffic Safety(道路交通安全グローバルフォーラム)の通称

③ 自動運転システムの実用化に向けた研究開発

平成30年から開始されたSIP(注1)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」では、産官学連携の下、東京臨海部の公道において、自動運転システムの実用化に向けた実証実験が実施されている。

警察では実証実験に必要な環境を整備するとともに、自動車メーカー等と連携し、クラウド等を活用して車両に信号情報を提供するための研究開発、衛星測位システム(GNSS(注2))による位置情報等を活用して公共車両等に対する優先信号制御を行うための研究開発等を推進している。

注1:SIPはCross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program(戦略的イノベーション創造プログラム)の略

注2:Global Navigation Satellite Systemの略

 
図表4-44 GNSSによる位置情報等を活用した優先信号制御のイメージ
図表4-44 GNSSによる位置情報等を活用した優先信号制御のイメージ


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