第3章 組織犯罪対策

3 国際組織犯罪に対処するための取組

(1)国内関係機関との連携

警察では、事前旅客情報システム(APIS)(注)等を活用して関係機関と連携した水際対策を行っている。出入国在留管理庁との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の手配や、偽装滞在者等に対する合同摘発を行うなど連携を図っている。また、税関との間では、不正輸出入を防止するための合同摘発を行うなど連携を図っている。

注:Advance Passenger Information Systemの略。航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報を入国前に照合するシステム

CASE

東京税関と連携し捜査したところ、ベトナム人の男(27)らが、令和2年11月、ベトナムから国際郵便でMDMAを密輸入していたことが判明した。同月、同男ら6人を麻薬特例法違反(規制薬物としての所持)で逮捕した(警視庁)。

(2)外国捜査機関等との連携

複数の国・地域において犯罪を敢行する国際犯罪組織に対処するためには、関係国の捜査機関等との情報交換、捜査協力等が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。

① ICPOを通じた国際協力

ICPOは、各国の警察機関を構成員とし、犯罪の捜査における国際的な協力を目的とした機関であり、令和2年末現在、我が国を含む194の国・地域が加盟している。ICPOでは、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等が行われている。警察庁は、捜査協力の実施のほか、ICPOが開催する国際組織犯罪対策に関連する様々な会合への参加、事務総局等への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

 
ICPO事務総局(リヨン)(©INTERPOL)
ICPO事務総局(リヨン)(©INTERPOL)
 
図表3-17 主な国際手配書の種別
図表3-17 主な国際手配書の種別
② 外国捜査機関との連携

警察庁では、ICPOを通じた捜査協力のほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)(注1)及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約等を活用して、外国捜査機関に対して捜査共助(注2)を要請するなどしている。

また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。

注1:227頁参照(第6章)

注2:外国の要請により、当該外国の刑事事件の捜査に必要な証拠の提供をすること

 
図表3-18 ICPOを通じた捜査協力件数の推移(平成23年~令和2年)
図表3-18 ICPOを通じた捜査協力件数の推移(平成23年~令和2年)
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図表3-19 捜査共助件数の推移(平成23年~令和2年)
図表3-19 捜査共助件数の推移(平成23年~令和2年)
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(3)国外逃亡被疑者等(注1)の追跡

国外逃亡被疑者等の数の推移は、図表3-20のとおりである。

警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、出入国在留管理庁に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。

このような取組の結果、令和2年中は、出国直前の被疑者18人(うち外国人17人)のほか、国外逃亡被疑者61人(うち外国人26人)を検挙した。

このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。

注1:日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者(以下「国外逃亡被疑者」という。)及びそのおそれのある者であって、主として警察が捜査対象としている者

注2:227頁参照(第6章)

 
図表3-20 国外逃亡被疑者等数の推移(平成23年~令和2年)
図表3-20 国外逃亡被疑者等数の推移(平成23年~令和2年)
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