第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

警察活動の最前線

警察の児童虐待対応


警察では、児童の安全確保を最優先とした児童虐待への対応を行っている。その最前線である警察署における対応の一例を職員の声と共に紹介する(被疑者及び被害児童は模擬)。

 
広島東警察署

① 通報受理

警察署で勤務中、付近住民から「近所の家の前で泣いている子供がいる」という児童虐待が疑われる事案の通報を受理した。

児童虐待が疑われる事案を認知した場合、できる限り速やかに現場臨場し、児童の安全を直接確認します。児童虐待は事態が急展開して重大事件に発展するおそれがあるため、警察署長や本部対処体制(注)に報告して組織的な対応をとるようにしています。

注:78頁参照

② 現場臨場

通報現場に臨場し、泣いている児童を発見した。児童から事情を聴取するとともに、通報者から聞き込みを行い、対象家庭(注)を特定することができた。

対象家庭を特定した際には、その家庭についての警察が保有する各種情報及び児童相談所等関係機関での過去の取扱状況の照会を行うことで、対象家庭の家庭環境を把握するよう努めています。

注:児童に対する虐待が疑われる家庭

 
対象家庭の特定
対象家庭の特定

③ 安全確認

児童の意向を確認し、保護者の同意を得た上で、児童の身体を確認した結果、児童の身体に新旧のあざがみられた。そこで、児童と保護者から事情を聴取したところ、父親が児童に対してこれまでにしつけと称して何度も平手打ちするなどの暴行を加えていたことが判明した。

 
児童の身体確認
児童の身体確認
 
保護者からの事情聴取
保護者からの事情聴取

対象家庭において、児童との面会を拒否された場合には、立入調査等の権限を有する児童相談所への協力要請を実施するなど、児童の安全確認ができるまで現場を離れないようにしています。

児童の身体確認は、児童が女児である場合には女性職員が確認します。また、児童の年齢に照らした正常な発育状態であるかという点にも注意して確認するようにしています。

④-1 児童相談所への通告・一時保護要請

児童の身体の直接確認や保護者からの聴取の結果を踏まえ、同児童は虐待を受けたと思われることから、児童相談所へ通告し、一時保護を要請した。

その後、児童相談所の職員が臨場の上、児童及び保護者から改めて聴取し、児童相談所が児童の一時保護を行うこととなった。

児童の安全確認の結果、児童虐待を受けたと思われる児童については、速やかに児童相談所へ通告しています。通告に際しては、児童相談所に対し、安全確認の経過や確認結果から判明した児童の身体の状況、保護者の対応等を客観的かつ具体的に伝達するよう心掛けています。

 
児童相談所への通告・一時保護要請
児童相談所への通告・一時保護要請
 
児童相談所職員への児童の安全確認結果の伝達
児童相談所職員への児童の安全確認結果の伝達

④-2 事件捜査・被害児童に対する配意と支援

父親による児童に対する暴行事件の捜査に当たっては、児童の心情や特性に配慮し、警察、検察及び児童相談所の代表者による児童からの聴取を行った上、父親を検挙した。

その後、児童の一時保護が解除され、児童相談所等関係機関と連携し、児童のカウンセリング及び保護者に対する助言・指導を実施することとした。

児童からの事情聴取は、児童の負担軽減に配意し、関係機関の代表者が聴取を行う取組を推進しています。

また、児童に対する支援に、公認心理師等の資格を有する専門的職員が対応に当たるなど、児童の心情に配意した対応を心掛けています。

 
代表者による児童からの聴取
代表者による児童からの聴取


前の項目に戻る     次の項目に進む