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警察活動の最前線

縁の下の力持ちと言われる鑑定人になれるように


千葉県警察本部刑事部科学捜査研究所化学科

野島 裕香(のじま ひろか)

 
シーポック

化学鑑定における工業製品鑑定とは、油類・塗料・繊維・毒劇物・プラスチック等の成分特定や犯罪現場に遺留された微細物資料の異同識別を行うものです。そのうち、私は、油類鑑定に長く携わっています。油類鑑定は、主に火災現場から採取された資料から、それらに付着している油種の特定を行う鑑定で、火災による熱や消火活動による影響等を受けている資料の中から油種の特定を行うため、難しい鑑定の一つです。

油類鑑定を一人で行うようになった当初は、鑑定作業の要領も悪く、常に緊張の連続でした。そのようなとき、県内で殺人・放火事件が発生し、私が油類鑑定を担当することになりました。捜査本部が設置されたこの事件では、現場から採取された多量の資料を鑑定していく中で、鑑定結果の判断が困難な資料もありましたが、先輩の助けを借りながら鑑定業務を遂行することができました。

鑑定結果は、直接被疑者を特定するものではありませんが、鑑定結果に基づき捜査を進めることで、火災の要因を特定し、どのようにして事件が起こったのかや被疑者の供述と事件現場の状況に矛盾がないかなど、捜査の地盤を強固にするものだということを肌で感じ、鑑定業務のやりがいや重要性を改めて認識しました。

油類鑑定に限らず、様々なものを資料として扱う化学鑑定は、ただ単に与えられた資料と向き合うだけでは正確で適正な鑑定結果を得ることはできません。日頃からの研究、情報収集等を積極的に行い、学会等の場を通じて様々な知見を共有するなど、知識を深める必要があります。私は、他県の有志と共に勉強会を立ち上げ、全国60人以上のメンバーと情報・意見交換等を行うことで油類鑑定の技術の向上に努めています。

また、時には現場に臨場し、現場の捜査、鑑識活動を直接見ることで自分が鑑定している資料がどこでどのように採取されているのかを確認し、鑑定人の立場から適切な資料の扱い方の教養をしています。

鑑定業務は、資料や機材に向き合っている時間が大半で、決して華やかな仕事ではありませんが、私はこの仕事に誇りを持っています。

事実を明らかにし、少しでも迅速かつ正確な鑑定ができるような鑑定人になれるようにこれからも日々精進していきたいと思います。縁の下の力持ちの鑑定人と言われるように。

 
千葉県警察本部刑事部科学捜査研究所化学科 野島 裕香(のじま ひろか)1
 
千葉県警察本部刑事部科学捜査研究所化学科 野島 裕香(のじま ひろか)2
 
千葉県警察本部刑事部科学捜査研究所化学科 野島 裕香(のじま ひろか)3

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。



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