警察白書の刊行に当たって

少子高齢化が急速に進んでいます。我が国は、これまで世界が経験したことのない高齢社会の入り口に立っています。高齢化に伴って生じる社会的課題といえば、医療、社会保障等が真っ先に思い当たりますが、治安と安心安全を守る警察もまた、高齢化に伴う様々な課題に立ち向かっています。
例えば、「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺の被害は深刻で、被害額は年300億円を超えていますが、その被害者の実に7、8割が高齢者という状況が続いています。高齢者が被害に遭いやすい犯罪や交通事故等から高齢者を守るための取組の必要性が高まっています。一方で、近年、高齢運転者による痛ましい交通死亡事故が相次いで発生していますし、高齢者による万引き等の犯罪の対策も求められています。今後、急速に高齢化が進展していく中で、警察としても様々な課題と向き合い、全ての人が安心安全な生活を送ることのできる環境づくりを進めていくことが重要です。
そこで、本年は、第1部(特集・トピックス)で「高齢化の進展と警察活動」と題する特集を組み、高齢者を犯罪・事故から守るための警察の取組や高齢者による犯罪・事故への対応と防止に向けた取組について紹介しています。
また、特に国民の皆様にお伝えしたい事項をトピックスとして取り上げて解説しています。本年は、新型コロナウイルス感染症をめぐる情勢を踏まえ、「新型コロナウイルス感染症に対する警察の取組」という項目を設け、空港、医療施設等における警戒警備や関連事犯の取締りの徹底等の取組について言及しています。
第2部(本編)では、最新の治安情勢や警察活動の現況等を分野ごとに紹介しています。
このほか、「警察活動の最前線」として、現場で活躍する警察職員が仕事上の苦労ややりがい等についての率直な心情をつづった手記等を掲載しています。
私も、昨年9月に国家公安委員会委員長に就任して以来、様々な機会を通じて現場の警察職員と接し、その活動を間近に見てまいりました。警察白書は、そうした第一線における活動も含め、我が国の警察活動全体の現況を広く国民の皆様に理解していただくために毎年作成しているものです。この白書が、警察行政に対する国民の皆様の御理解を一層深めることに役立ちますとともに、今後の警察活動に対して多くの御支援、御協力を賜りますことを心から願うものであります。