第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

第1節 犯罪情勢とその対策

我が国の犯罪情勢を測る指標のうち、刑法犯認知件数の総数については、令和元年(2019年)は74万8,559件となり、前年に引き続き戦後最少を更新した(刑法犯検挙件数の総数は29万4,206件となり、引き続き減少しているものの、検挙率については39.3%と前年比で1.4ポイント上昇した。)。

認知件数減少の内訳をみると、官民一体となった総合的な犯罪対策の推進や防犯機器の普及、その他の様々な社会情勢の変化を背景に、総数に占める割合の大きい街頭犯罪及び侵入犯罪については、平成15年(2003年)以降一貫して減少している(刑法犯認知件数が戦後最多となった平成14年からの減少率は82.8%となっている。)。また、罪種でみると、総数に占める割合の大きい窃盗犯及び器物損壊等については、平成15年以降一貫して減少している(平成14年からの減少率は76.5%となっている。)。

刑法犯認知件数の総数が減少する一方で、特殊詐欺については、高い発信力を有する著名な方々と連携した広報啓発の展開をはじめとする諸対策の推進により、前年比では減少したものの、依然として高い水準にある。また、平成30年以降、キャッシュカード詐欺盗(注1)が増加するなど、その犯行手口の多様化・巧妙化もみられ、さらに令和元年には、高齢者から電話で資産状況を聞き出した上で犯行に及ぶ手口の強盗被害が発生するなど厳しい状況が続いている。

刑法犯認知件数以外の指標についてみると、サイバー犯罪の検挙件数が高い水準で推移するとともに、警察庁が検知したサイバー空間における探索行為等とみられるアクセスの件数が増加傾向(注2)にある。また、インターネットバンキングに係る不正送金事犯については、平成28年以降、金融機関のセキュリティ対策の強化等により発生件数・被害額ともに減少傾向が続いていたが、令和元年9月から急増(注3)しており、その被害の多くは金融機関を装ったフィッシングによるものとみられている。このほか、SNSに起因する事犯の被害児童数が増加(注4)するなど、サイバー空間を通じて他人と知り合うことなどを契機として犯罪被害に遭う事例もみられる。

これらの指標をもって事案の発生状況を正確に把握することは難しいものの、近年、国内外で様々なサイバー攻撃が発生していることも踏まえると、サイバー空間における脅威は深刻な情勢が続いている。

ストーカー事案については、前年比では減少したものの、引き続き、相談等件数及び検挙件数が高い水準で推移(注5)している。また、配偶者からの暴力事案等及び児童虐待については、配偶者からの暴力事案等の相談等件数及び児童虐待の通告児童数が増加傾向にあり、その検挙件数もそれぞれ増加傾向(注6)にある。これらの指標をもって事案の発生状況を正確に把握することは難しいものの、ストーカー事案、配偶者からの暴力事案等及び児童虐待の情勢について引き続き留意すべきものといえる。

以上のとおり、様々な社会情勢を背景として、近年の犯罪情勢は、総数に占める割合の大きい罪種・手口を中心に刑法犯認知件数の総数が継続的に減少しているものの、必ずしも当該指標では捉えられない情勢もあり、依然として予断を許さない状況にある。

注1:4頁参照

注2:114頁参照

注3:110頁参照

注4:61頁参照

注5:52頁参照

注6:52、53頁参照

1 刑法犯

(1)刑法犯の認知・検挙状況

刑法犯の認知・検挙状況の推移は、図表2-1のとおりである。

 
図表2-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和23年(1948年)~令和元年)
図表2-1 刑法犯の認知・検挙状況の推移(昭和23年(1948年)~令和元年)
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(2)刑法犯による身体的被害の状況

刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移は、図表2-2のとおりである。平成15年以降、いずれの数も減少傾向にある。

 
図表2-2 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成22~令和元年)
図表2-2 刑法犯により死亡し、又は傷害を受けた者の数の推移(平成22~令和元年)
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(3)重要犯罪(注)の認知・検挙状況

重要犯罪の認知・検挙状況の推移は、図表2-3のとおりである。令和元年中の重要犯罪の認知件数は、ピーク時である平成15年の2万3,971件と比べ1万4,072件(58.7%)減少した。検挙率は、平成25年以降は上昇傾向にあり、令和元年は85.9%であった。

注:殺人、強盗、強制性交等、強制わいせつ、放火、略取誘拐及び人身売買

 
図表2-3 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-3 重要犯罪の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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① 殺人

殺人の認知・検挙状況の推移は、図表2-4のとおりである。

 
図表2-4 殺人の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-4 殺人の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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図表2-5 殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和元年)
図表2-5 殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和元年)
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図表2-6 親族間の殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和元年)
図表2-6 親族間の殺人の被疑者と被害者の関係別検挙状況(令和元年)
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② 強盗

強盗の認知・検挙状況の推移は、図表2-7のとおりである。

 
図表2-7 強盗の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-7 強盗の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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図表2-8 強盗の手口別認知状況(令和元年)
図表2-8 強盗の手口別認知状況(令和元年)
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図表2-9 侵入強盗の手口別認知状況(令和元年)
図表2-9 侵入強盗の手口別認知状況(令和元年)
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③ 強制性交等・強制わいせつ

強制性交等の認知・検挙状況の推移は、図表2-10のとおりである。

また、強制わいせつの認知・検挙状況の推移は、図表2-11のとおりである。

 
図表2-10 強制性交等の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-10 強制性交等の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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図表2-11 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-11 強制わいせつの認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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④ 放火

放火の認知・検挙状況の推移は、図表2-12のとおりである。

 
図表2-12 放火の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-12 放火の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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⑤ 略取誘拐・人身売買

略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移は、図表2-13のとおりである。略取誘拐・人身売買の認知件数を被害者の男女別でみると、女性が被害者である割合は、令和元年は83.6%であった。

 
図表2-13 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
図表2-13 略取誘拐・人身売買の認知・検挙状況の推移(平成22~令和元年)
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