第4章 組織犯罪対策

3 犯罪収益の剥奪

犯罪収益が、犯罪組織の維持・拡大や将来の犯罪活動への投資等に利用されることを防止するためには、これを剥奪することが重要である。警察では、没収・追徴の判決が裁判所により言い渡される前に犯罪収益の隠匿や費消等が行われることのないよう、組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に定める起訴前の没収保全措置を積極的に活用して没収・追徴の実効性を確保している。

(1)没収・追徴の状況

第一審裁判所において行われる通常の公判手続における組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況は、図表4-22のとおりである。

 
図表4-22 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成25~29年)
図表4-22 組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法の没収・追徴規定の適用状況の推移(平成25~29年)
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(2)起訴前の没収保全

平成30年中における起訴前の没収保全命令は、組織的犯罪処罰法で風営適正化法違反、売春防止法違反、入管法(注)違反、賭博、詐欺等に関して206件(前年比18件(9.6%)増加)発出され、麻薬特例法で17件(前年比6件(54.6%)増加)発出されている。

注:出入国管理及び難民認定法

 
図表4-23 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成26~30年)
図表4-23 起訴前の没収保全命令の発出状況の推移(平成26~30年)
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CASE

会社員の男(50)は、平成27年6月から30年1月にかけて、異性交際あっせん名目で男性から現金合計約1,140万円をだまし取り、同男性に、当該詐取金を自らが管理する他人名義の口座等へ振り込ませて隠匿した。平成30年6月、同男を組織的犯罪処罰法違反(犯罪収益等隠匿)で逮捕するとともに、自己名義等の口座に滞留する犯罪収益等である預金債権約550万円に対して、組織的犯罪処罰法の規定に基づく起訴前の没収保全命令が発出された(徳島)。



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