第4章 組織犯罪対策

3 国際組織犯罪に対処するための取組

(1)国内関係機関との連携

警察では、事前旅客情報システム(APIS)等を活用して関係機関と連携した水際対策(注)を行っている。出入国在留管理庁との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の手配や、偽装滞在者等に対する合同摘発を行うなど連携を図っている。また、税関との間では、不正輸出入を防止するための合同摘発を行うなど連携を図っている。

注:40頁参照

(2)外国捜査機関等との連携

複数の国・地域において犯罪を敢行する国際犯罪組織に対処するためには、関係国の捜査機関等との情報交換、捜査協力等が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。

① ICPOを通じた国際協力

ICPOは、各国の警察機関を構成員とし、犯罪の捜査における国際的な協力を目的とした機関であり、平成30年末現在、我が国を含む194の国・地域が加盟している。ICPOでは、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等が行われている。警察庁は、捜査協力の実施のほか、ICPOが開催する国際組織犯罪対策に関連する様々な会合への参加、事務総局等への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

 
第87回ICPO総会(©INTERPOL)
第87回ICPO総会(©INTERPOL)

CASE

日本人の男(60)は、平成15年7月、五代目山口組傘下組織(当時)の幹部に対して拳銃を発射し、同幹部の顔面に命中させて殺害した。同男は日本国外に逃亡していたが、ICPOを通じて国際手配を行ったところ、平成30年1月、タイ王国警察から、同男を不法滞在で拘束し、退去強制とする旨の情報を得たため、同年2月、同男を殺人罪等で逮捕した(三重)。

② 外国捜査機関との捜査協力

警察庁では、ICPOルートのほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)(注)及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約等を活用して、外国捜査機関に対して捜査協力を要請するなどしている。

また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。

注:237頁参照

(3)国外逃亡被疑者等(注1)の追跡

国外逃亡被疑者等の数の推移は、図表4-18のとおりである。

警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、出入国在留管理庁に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。

このような取組の結果、平成30年中は、出国直前の外国人被疑者17人のほか、国外逃亡被疑者113人(うち外国人64人)を検挙した。

このほか、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。

注1:日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者(以下「国外逃亡被疑者」という。)及びそのおそれのある者

注2:237頁参照

 
図表4-18 国外逃亡被疑者等数の推移(平成21~30年)
図表4-18 国外逃亡被疑者等数の推移(平成21~30年)
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