第7章 警察活動の支え

第3節 外国治安機関等との連携

(1)国際的な犯罪に対する外国治安機関等との連携

① ASEAN加盟国、G7各国等との連携

警察庁では、国際テロ対策、サイバーセキュリティ対策等の分野において、ASEAN加盟国等の外国治安機関等との協力関係の強化に取り組んでいる。

平成29年(2017年)9月にはフィリピンにおいて、ASEAN+3国際犯罪閣僚会議(注1)の第8回会議及び日・ASEAN国際犯罪閣僚会議の第3回会議が開催され、我が国からは国家公安委員会委員長が出席したほか、同月にはシンガポールにおいて、ASEAN警察長官会合(ASEANAPOL)(注2)の第37回会合が開催され、我が国から警察庁幹部が出席した。また、平成29年(2017年)10月にはイタリアにおいて、平成30年(2018年)3月にはカナダにおいて、G7ローマ/リヨン・グループ会合が開催され、我が国からは警察庁担当者等が出席し、国際組織犯罪対策やテロ対策について積極的に議論に参加した。さらに、同年4月にはカナダにおいて、G7安全担当大臣会合が開催され、我が国からは国家公安委員会委員長が出席した。

注1:ASEAN加盟国に日本、中国及び韓国を加えた治安機関の閣僚が参加する会議

注2:東南アジア地域の警察機関相互の交流促進を目的として昭和56年に結成されたもので、我が国は、中国、韓国等と共に議決権のない参加資格である「ダイアログ・パートナー」として参加している。

 
第8回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議
第8回ASEAN+3国際犯罪閣僚会議
② 二国間等の連携

警察では、国際的な犯罪対策において我が国と関わりの深い国の治安機関との間で協議を行うなどして協力関係を深めている。29年11月には東京において、中国公安部との間で第10回日中警察協議を、韓国警察庁との間で第6回日韓警察協議を、中国公安部及び韓国警察庁との間で第3回日中韓警察局長級会議を、それぞれ開催したほか、同月にはベトナム・ハノイにおいて、ベトナム公安省との間で第5回日越治安当局次官級協議を開催した。また、国家公安委員会委員長が、マレーシア(同年9月)、フランス(30年4月)等各国の治安担当大臣及びペルー(29年6月)等各国の駐日大使と会談を行うなど、外国治安機関等との協力関係を強化した。

 
第5回日越治安当局次官級協議
第5回日越治安当局次官級協議
 
国家公安委員会委員長とマレーシア副首相兼内務大臣との会談の様子
国家公安委員会委員長とマレーシア副首相兼内務大臣との会談の様子

(2)治安に関係する国際約束の締結

刑事共助条約(協定)は、捜査共助の実施を条約上の義務とすることで捜査共助の一層確実な実施を期すとともに、捜査共助の実施のための連絡を外交当局間ではなく、条約が指定する中央当局間で直接行うことにより、手続の効率化・迅速化を図るものである。これまでに米国、韓国、中国、香港、EU及びロシアとの間で締結している。また、犯罪人引渡条約は、日本で犯罪を犯し国外に逃亡した犯罪人等を確実に追跡し、逮捕するため、一定の場合を除き、犯罪人の引渡しを相互に義務付けるものであり、これまでに米国及び韓国との間で締結している。このほか、平成26年2月、PCSC協定(注)が日米両政府間において署名され、引き続き同協定の発効に向けた協議を行っている。

注:重大な犯罪を防止し、及びこれと戦う上での協力の強化に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定(Agreement between the Government of Japan and the Government of the United States of America on Enhancing Cooperation in Preventing and Combating Serious Crime)の略称。日米査証免除措置の下で安全な国際的渡航を一層容易にしつつ、日米両国国民の安全を強化するために、重大な犯罪を防止し、及び捜査することを目的として、相互に必要な指紋情報等を交換するための枠組みを定めたもの

(3)国際協力の推進

警察庁では、我が国の警察の知見や特質をいかせる分野において、外務省やJICAと協力し、専門家の派遣や研修員の受入れを通じた海外の警察に対する支援を行っている。平成29年中には、9人の専門家を新たに派遣した。

ア インドネシア国家警察改革支援プログラム

13年以降、インドネシア国家警察改革支援プログラムを実施しており、国家警察長官アドバイザー兼プログラム・マネージャーを含む専門家を派遣している。24年以降、市民警察活動を全国展開させるため、交番制度、現場鑑識活動等に関するこれまでの協力の成果の一層の定着・展開を支援している。

イ ブラジルに対する地域警察活動普及支援

ブラジル政府からの要請に基づき、27年1月から30年1月にかけて、専門家をブラジルに派遣するとともに、ブラジルの警察官に対して都道府県警察での実地研修を行い、交番制度をはじめとした地域警察活動の更なる質の向上及び全国展開に向けた支援を行った。

ウ 研修員の受入れ

警察では、知識・技術の移転及び諸外国との情報交換の促進を図るため、都道府県警察における実地研修、警察大学校国際警察センターにおけるセミナー等を行っている。29年中には、15回の研修でインドネシア、ベトナム、ブラジル、ミャンマー等各国の警察幹部を含む188人の研修員を受け入れた。

 
インドネシアの警察官への研修の様子
インドネシアの警察官への研修の様子

MEMO 警察による国際緊急援助活動

我が国は、外国で大規模な災害が発生し、被災国政府又は国際機関の要請があった場合、被災地に国際緊急援助隊を派遣しており、警察もその救助チーム等の一員として国際緊急援助活動を行っている。

警察では、国際緊急援助隊の派遣に関する法律が施行された昭和62年以降、延べ290人の隊員を延べ16の国・地域に派遣し、被災者の捜索・救助等を行った。

例えば、平成29年(2017年)9月にメキシコ中央部で発生したマグニチュード7.1の地震に際して派遣された救助チームには、警察職員23人及び警備犬4頭が参加し、建物倒壊現場での被災者の捜索等に従事した。また、平成30年(2018年)2月に台湾東部で発生したマグニチュード6.4の地震に際して派遣された専門家チームには、警察職員2人が参加し、行方不明者の捜索・救助活動の支援を実施した。

 
メキシコにおける被災者の捜索状況
メキシコにおける被災者の捜索状況


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