第7章 警察活動の支え

5 犯罪被害者支援

(1)警察による犯罪被害者支援(注1)

① 基本施策

犯罪被害者及びその遺族又は家族(以下「犯罪被害者等」という。)は、犯罪によって直接、身体的、精神的又は経済的な被害を受けるだけでなく、様々な二次的被害を受ける場合がある。そこで、警察では図表7-14のとおり、様々な側面から犯罪被害者支援の充実を図っている。また、各都道府県警察において、あらかじめ指定された警察職員が事件発生直後に犯罪被害者支援を行う指定被害者支援要員制度(注2)が導入されている。

注1:犯罪被害給付制度については、50頁(トピックスII 犯罪被害給付制度の充実)参照

注2:平成29年末現在の要員総数 3万6,708人(30年4月25日時点の集計値)

 
図表7-14 犯罪被害者支援に関する主な施策
図表7-14 犯罪被害者支援に関する主な施策
② 国外犯罪被害弔慰金等支給制度

国外犯罪被害弔慰金等支給制度は、日本国外において行われた人の生命又は身体を害する故意の犯罪行為により、死亡した日本国籍を有する者(日本国外の永住者を除く。以下同じ。)の第一順位遺族(日本国籍を有せず、かつ、日本国内に住所を有しない者を除く。)に国外犯罪被害弔慰金として被害者一人当たり200万円を、障害等級第1級相当の障害が残った日本国籍を有する者に国外犯罪被害障害見舞金として一人当たり100万円を、それぞれ支給するものであり、28年11月から開始された。

③ 犯罪被害者等の特性に応じた施策

犯罪類型等によって犯罪被害者等には異なる特性があることから、警察では、性犯罪被害者、交通事故被害者(注1)、配偶者からの暴力事案の被害者(注2)、ストーカー事案の被害者(注3)、被害少年(注4)、暴力団犯罪被害者等について、その特性に応じた施策を推進している。

注1:181貢参照

注2:30貢参照

注3:30貢参照

注4:82貢参照

 
図表7-15 犯罪被害者等の特性に応じた施策の例
図表7-15 犯罪被害者等の特性に応じた施策の例
④ 関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が支援を必要とする事柄は、生活、医療、公判等多岐にわたるため、全ての都道府県で、警察のほか、検察庁、弁護士会、医師会、臨床心理士会、地方公共団体の担当部局や相談機関等の関係機関・団体から構成される「被害者支援連絡協議会」が設立され、犯罪被害者支援のための相互の連携を図っている。

また、個々の事案において、犯罪被害者等の具体的なニーズを把握した総合的支援を行うために、警察署等を単位とした連絡協議会「被害者支援地域ネットワーク」が構築されている。

さらに、よりきめ細かな犯罪被害者支援を行うため、全ての都道府県において、犯罪被害者支援法に基づき、都道府県公安委員会が犯罪被害等の早期の軽減に資する事業を適正かつ確実に実施できる団体を犯罪被害者等早期援助団体として指定している。同団体では、犯罪被害者等の支援に関する広報啓発活動、犯罪被害等に関する相談への対応、犯罪被害者等給付金の裁定の申請の補助及び物品の供与又は貸与、役務の提供その他の方法による犯罪被害者等の援助を行っており、都道府県警察では、同団体に対し、犯罪被害者等の同意を得て、犯罪被害の概要に関する情報を提供することで、犯罪被害者等が同団体による支援を受けやすくなるよう努めている。

 
図表7-16 被害者支援連絡協議会
図表7-16 被害者支援連絡協議会

MEMO 全国被害者支援ネットワーク

平成3年に開催された「犯罪被害給付制度発足10周年記念シンポジウム」において、犯罪被害者の遺族から精神的支援の必要性が強く指摘されたことを契機に、更なる犯罪被害者支援のための検討が行われ、4年には、全国初の民間被害者支援団体として、東京に犯罪被害者相談室が設立された。その後、10年2月までに8つの民間被害者支援団体が設立され、同年5月、これらの団体により、全国被害者支援ネットワークが設立された。

現在、全都道府県に民間被害者支援団体が設立されており、このうち犯罪被害者等早期援助団体の指定を受けた団体は、全て同ネットワークに加盟している。警察庁では、同ネットワークが開催する民間被害者支援団体の相談員等への研修に職員を講師として派遣しているほか、毎年、同ネットワークと全国犯罪被害者支援フォーラムを共催するなどして犯罪被害者等の支援に関する広報啓発を推進しており、29年10月には「性犯罪被害者支援の充実をめざして」をテーマとして、同フォーラムを開催した。

 
全国犯罪被害者支援フォーラム2017
全国犯罪被害者支援フォーラム2017

(2)第3次犯罪被害者等基本計画の推進

犯罪被害者等基本法において、政府は、犯罪被害者等のための施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、犯罪被害者等のための施策に関する基本的な計画を定めなければならないこととされている。

これに基づき、平成17年には犯罪被害者等基本計画が、23年には第2次犯罪被害者等基本計画がそれぞれ策定されていたところ、28年4月、それまでの基本計画の推進による成果を踏まえつつ、28年度から32年度までの5年間を計画期間とする第3次犯罪被害者等基本計画が策定された。

犯罪被害者等基本計画の作成及び推進に関する事務を担う警察庁では、関係府省庁が推進する具体的施策について、その進捗状況を定期的に確認するとともに、年次報告等を通じて公表するなど、第3次犯罪被害者等基本計画の確実な推進を図っている。

 
図表7-17 第3次犯罪被害者等基本計画の概要
図表7-17 第3次犯罪被害者等基本計画の概要

MEMO 地方公共団体と連携した犯罪被害者等の支援のための取組

地方公共団体では、犯罪被害者等に適切な情報提供等を行う総合的対応窓口の設置や、犯罪被害者等が必要とする医療・福祉、住宅、雇用等の生活全般にわたる支援等、各種施策を推進している。

警察庁では、こうした地方公共団体における犯罪被害者等の支援の更なる充実のため、地方公共団体の担当者を招致した会議等を通じ、総合的対応窓口の機能の充実を要請するとともに、犯罪被害者等に関する条例の制定状況等について情報提供を行うなどしている。

 
都道府県・政令指定都市犯罪被害者等施策主管課室長会議
都道府県・政令指定都市犯罪被害者等施策主管課室長会議


前の項目に戻る     次の項目に進む