第7章 警察活動の支え

第7章 警察活動の支え

第1節 警察活動の基盤

1 警察の体制

(1)定員

平成30年度の警察職員の定員は総数29万6,702人であり、このうち7,902人が警察庁の定員、28万8,800人が都道府県警察の定員である。

 
図表7-1 警察職員の定員(平成30年度)
図表7-1 警察職員の定員(平成30年度)
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(2)警察力強化のための取組

地方警察官については、平成13年度から29年度までの間に合計3万1,811人の増員を行ってきた。刑法犯認知件数が14年以降15年連続して減少するなど、地方警察官の増員は、他の施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる(注)

しかし、我が国の治安は、刑法犯認知件数等の指標が改善する一方で、人身安全関連事案は後を絶たず、高齢者を中心に大きな被害が生じている特殊詐欺の認知件数が増加しているとともに、国際テロ情勢の悪化やサイバー空間の脅威の増大がみられるなど課題が山積している。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の成功に向けて、警察の事態対処能力を強化することが必要となっており、引き続き、時代に合わせて警察力の強化に努める必要がある。このため、警察では、次のような警察力強化のための取組を強力に推進し、厳しい治安情勢に的確に対応することとしている。

注:8頁参照

① 退職警察職員の積極的活用

交番相談員、捜査技能伝承官等の非常勤職員を拡充し、また、再任用制度を積極的に活用することで、即戦力たる退職警察職員により現場執行力を補完するとともに、経験豊富な警察職員の優れた技能を若手警察職員に伝承している。

② 優秀な人材確保のための採用募集活動の強化

警察庁では、警察官という職業の魅力をアピールするため、合同企業説明会への参加、警察庁ウェブサイトや民間の就職サイトを通じた情報提供等を行い、都道府県警察の採用募集活動を支援している。

 
合同企業説明会における採用募集活動の様子
合同企業説明会における採用募集活動の様子

(3)女性警察官の採用・登用の拡大

警察では、女性警察官の採用に積極的に取り組んでいる。毎年度1,000人を超える女性警察官を採用し、女性警察官数は年々増加している。平成29年度には1,827人(新規採用者総数に占める比率は17.8%)の女性警察官が採用された。

図表7-2 都道府県警察の女性警察官数及び地方警察官に占める女性警察官の割合の推移(平成21〜30年度)
図表7-2 都道府県警察の女性警察官数及び地方警察官に占める女性警察官の割合の推移(平成21〜30年度)
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女性が被害者となる性犯罪や配偶者からの暴力事案等の捜査、被害者支援等、女性警察官の能力や特性をいかした分野のほか、強行犯捜査、知能犯捜査等の捜査全般、暴力団対策、警衛・警護等の分野でも活躍するなど女性警察官の職域は全ての分野に拡大しており、警察署長をはじめとする幹部への登用も進んでいる。

図表7-3 都道府県警察で採用された女性警察官のうち警部以上の人数の推移(平成21〜30年度)
図表7-3 都道府県警察で採用された女性警察官のうち警部以上の人数の推移(平成21〜30年度)
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また、都道府県警察では、25年に「警察における女性の視点を一層反映した対策の推進に関する検討会」から受けた提言を踏まえ、多様性のある社会のニーズに応えるため、女性の視点をいかした警察づくりに取り組んでおり、女性用仮眠施設の整備や装備資機材の改良、仕事と育児の両立を支援する制度の整備・拡充等の女性が活躍できる環境の整備に向けた様々な取組を推進している。

さらに、警察庁においても、様々な背景を持つ多様な人材が能力を発揮できる環境を整えることにより、警察組織を質的に強化するため、28年に「警察庁におけるワークライフバランス等の推進のための取組計画」(注)を策定し、更なる女性の採用・登用の拡大等に取り組んでいる。

注:https://www.npa.go.jp/sonota/jinji/20160310_wlbtorikumikeikaku.pdf

MEMO 警察署の地域課長として

青森県七戸警察署地域課長 米澤貴子警部

(現 青森県警察本部生活安全部地域課課長補佐)

平成29年4月1日に警察署の地域課長として赴任しました。

当県の警察署の職員は、以前は勤務先の警察署の管内に居住することとされていましたが、ワークライフバランスの推進のため、その原則が緩和されたことから、私は、夫と5歳の長男と暮らす自宅から七戸警察署に通勤しています。

雑踏警備や行方不明者の捜索等、早朝や夜間、休日の事案対応も多いですが、夫や両親、同僚に支えられながら、仕事と育児を両立させることができています。

地域部門が扱う仕事は多岐にわたります。子供や女性、高齢者が当事者となる事件や事故も少なくありません。だからこそ、女性であることや出産・育児等の経験をいかした対応が必要であると考えています。母親の心情を理解できる地域課長として、課員と共に、地域住民に寄り添いながら仕事に励んでいきたいと思います。

 
青森県七戸警察署地域課長 米澤貴子警部

(4)教育訓練

警察職員には、適正に職務を執行するため、良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。

① 警察学校における教育訓練

都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。

 
図表7-4 警察学校における教育訓練体系
図表7-4 警察学校における教育訓練体系
② 職場における教育訓練

警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、職務執行の際に求められる高い倫理観を培うため、有識者による講習会等を行っている。

③ 術科訓練の充実強化

凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、拳銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター(注)等による拳銃訓練をはじめ、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。

注:スクリーン投影した映像に向け、レーザー光線で射撃を行う訓練装置

 
映像射撃シミュレーター
映像射撃シミュレーター
 
実践的な訓練
実践的な訓練

(5)警察職員の殉職・受傷

警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。

警察では、殉職・受傷した警察職員又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、特記すべき職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。



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