第5章 安全かつ快適な交通の確保

2 道路交通環境の整備による歩行者等の安全通行の確保

我が国では、全交通事故死者のうち、歩行中・自転車乗用中の死者の占める割合が欧米諸国と比べて著しく高くなっており(注)、歩行者・自転車利用者の交通事故防止対策が重要な課題となっている。

注:30日以内死者数のうち、歩行中・自転車乗用中の死者数の占める割合は、フランスが20.7%(平成28年(2016年))、英国が30.5%(同年)、アメリカが18.2%(同年)であるのに対して、日本は52.2%(平成29年)となっている。

(1)ゾーン30の推進

警察では、市街地等の生活道路における歩行者等の安全な通行を確保するため、道路管理者と連携して、ゾーン30の整備を推進している。ゾーン30とは、区域(ゾーン)を設定して、最高速度30キロメートル毎時の区域規制や路側帯の設置・拡幅を実施するとともに、その区域の道路交通の実態に応じて通行禁止等の交通規制の実施やハンプ(注1)の設置等の対策により、区域内における速度を規制し、通過交通の抑制・排除を図るものであり、平成29年度末までに全国で3,407か所を整備した。

また、27年度末までに全国で整備したゾーン30において、整備前年度と整備翌年度の1年間における交通事故発生状況を比較したところ、交通事故発生件数は23.5%、対歩行者・自転車事故(注2)件数は18.6%減少するなど、区域内における交通事故防止及び自動車の速度の抑制に効果があることが確認された。警察では、これらの分析結果を踏まえ、引き続き、高齢者や子供の通行が多い区域等においてゾーン30の整備を進めるとともに、既に整備した区域においても、ゾーン30の入口を明確化する路面表示の設置等の対策を講じている。

注1:車両の低速走行等を促すための道路に設ける盛り上がり(凸部)

注2:自動車が第1当事者又は第2当事者であって、相手当事者が歩行者又は自転車である交通事故

 
図表5-44 ゾーン30の整備イメージ
図表5-44 ゾーン30の整備イメージ

(2)バリアフリー対応型信号機等の整備の推進

警察では、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律に基づき、高齢者、障害者等が道路を安全に横断できるよう、次の対策を講じている。

① バリアフリー対応型信号機の整備

音響により信号表示の状況を知らせる音響式信号機、信号表示面に青時間までの待ち時間及び青時間の残り時間を表示する経過時間表示機能付き歩行者用灯器、歩行者等と車両が通行する時間を分離して交通事故を防止する歩車分離式信号等を整備している。

 
音響式信号機
音響式信号機
 
経過時間表示機能付き歩行者用灯器
経過時間表示機能付き歩行者用灯器
② 見やすく分かりやすい道路標識・道路標示等の整備

自動車の前照灯の光に反射しやすい素材を用いるなどして見やすく分かりやすい道路標識・道路標示を整備するとともに、横断歩道上における視覚障害者の安全性及び利便性を向上させるエスコートゾーンを整備している。

 
高輝度標識
高輝度標識
 
エスコートゾーン
エスコートゾーン


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