第4章 組織犯罪対策

捜査の最前線

刑事の一日

昼夜を分かたず最前線で国民の安全安心を守っている刑事の活動を、警視庁A警察署組織犯罪対策課で勤務するB警部補のある当番勤務の一日を通じて描写する。

① 07:00 術科訓練

警察官たるもの、都民を危険から守るとともに、適切に職務を遂行するためにも、日頃から術科訓練が欠かせない。今日は地域課員の若手警察官と柔道の稽古を行う。朝の訓練におけるコミュニケーションが日頃の業務の円滑化にもつながる。

 
術科訓練

② 09:00 署長訓授

署長訓授を受ける。最近管内で特殊詐欺が発生したことを受け、各種職務執行の中で金融機関に立ち寄るなど、警戒活動を強化するよう指示があった。

 
署長訓授

③ 10:00 路上強盗事案の発生

警視庁通信指令本部から「A警察署管内で持凶器強盗事案が発生。受傷事故防止に配意しながら至急現場に急行せよ」との指令がなされ、管内に緊急配備が発令されたため、刑事課等他課の捜査員と共に耐刃防護衣を着用し、被疑者確保のため現場に急行した。

事件発生現場で聞き込みを実施していたところ、警視庁機動捜査隊から「被疑者の人着に酷似した者が運転する車両を発見した」との続報が入った。

乗車していた男に対し、機動捜査隊員らと共に職務質問を実施したところ、同男は被害品を所持しており、犯行を認めたため、同男を緊急逮捕した。

事件発生時には、本部の捜査員や他課と連携した迅速・的確な初動捜査が重要だ。

 
路上強盗事案の発生

④ 13:00 昼食

路上強盗事案への対応でいつもより昼食は遅くなったが、今日は警察署内の食堂で同じ当番の警察官らと、昼食を取ることにした。

お互いの最近の業務内容について情報交換を行うとともに、子育てについて会話が弾んだ。

 
昼食

⑤ 14:00 偽造クレジットカード所持事案の発生

管内の百貨店から、「偽造クレジットカードのようなものを持っている外国人が来店している」との通報があったため、現場に急行した。

当該外国人が所持しているカードが偽造されたものであることを確認し、同外国人を不正電磁的記録カード所持罪で現行犯逮捕した。

⑥ 15:00 取調べ

逮捕した被疑者の取調べを行う。被疑者から余罪についての供述が得られたことから、今後の捜査方針について上司と相談することにした。

 
取調べ

⑦ 16:30 当直指示

今日は6日に一度の当番勤務の日である。幹部の指示を受けて夜間帯の勤務に備える。

管内においては、夜間帯の事案も多いため、事案が発生した際には幹部に速報し、各課連携して対応するよう指示があった。

⑧ 19:00 夕食

今日の夕食は警察署の近くの店舗から出前を取ることにした。いつ事案が発生しても対応することができるよう、しっかりと食べておこう。

⑨ 23:00 けんか・口論事案の発生

繁華街の一角にある飲食店において、日本人と外国人のけんか・口論事案が発生している旨の通報が入ったため、急遽(きょ)現場へ臨場する。

両者から別々に事情聴取を行った結果、暴行の事実を確認することができないことなどから、再度のトラブルを防止するため、両者を説諭し落ち着かせ、別々に帰宅させる。

 
けんか・口論事案の発生

⑩ 翌日02:00 応援要請〜令状請求〜検挙

管内の警戒活動に従事しようとしたところ、警視庁自動車警ら隊から、「薬物使用の疑いあり、任意採尿拒否」との連絡があったため、現場に臨場する。

職務質問対象者は、その言動や腕の注射痕から薬物使用の蓋然性が高いものの、所持品検査や任意採尿に応じない。

着衣及び所持品に対する捜索差押え並びに強制採尿を実施するため、東京簡易裁判所に対し、捜索差押許可状の請求を行い、裁判官の審査を受け、令状の発付を受けた。

被疑者に対し令状を示し、着衣及び所持品に対する捜索差押えを実施したものの、覚醒剤は発見されなかったが、被疑者がなお任意採尿に応じなかったことから、採尿のため病院に移動し、強制採尿を実施した。

被疑者の尿に対し覚醒剤の予試験を実施したところ、陽性の反応を呈した。

警視庁科学捜査研究所に対し鑑定を依頼し、被疑者の尿から覚醒剤が検出された旨の連絡を受けたことなどから、被疑者を覚せい剤取締法違反(使用)で緊急逮捕した。

 
応援要請
 
覚醒剤の予試験
 
警視庁科学捜査研究所に対し鑑定を依頼

⑪ 翌日08:30 翌日の当番員へ引継ぎ

逮捕した被疑者を東京地方検察庁へ送致するための準備が整ったので、送致書類の決裁を幹部から受けた。

翌日の当番員に当番中の管内の状況等について引き継ぎ、当番勤務を終了する。

今回の当番は特に忙しかった。

今日は帰ってゆっくり体を休めよう。

 
翌日の当番員へ引継ぎ

【休日】

今日は子供が通う学校の授業参観日。仕事のことを忘れ、家族のために「良きお父さん」になる。



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