第4章 組織犯罪対策

3 国際組織犯罪に対処するための取組

(1)国内関係機関との連携

警察では、事前旅客情報システム(APIS)(注)等を活用して関係機関と連携した水際対策を行っている。法務省入国管理局との間では、被疑者が国外に逃亡するおそれのある場合の手配や、偽装滞在者等に対する合同摘発を行うなど連携を図っている。また、税関との間では、不正輸出入を防止するための合同摘発を行うなど連携を図っている。

注:Advance Passenger Information Systemの略。航空機で来日する旅客及び乗員に関する情報と関係省庁が保有する要注意人物等に係る情報を入国前に照合するシステム

(2)外国捜査機関等との連携

複数の国・地域において犯罪を敢行する国際犯罪組織に対処するためには、関係国の捜査機関等との情報交換、捜査協力等が不可欠であり、警察では次のような取組を進めている。

① ICPOを通じた国際協力

ICPOは、各国の警察機関を構成員とし、犯罪の捜査における国際的な協力を目的とした機関であり、平成29年末現在、我が国を含む192の国・地域が加盟している。ICPOでは、国際犯罪に関する情報の収集と交換、犯罪対策のための国際会議の開催や国際手配書の発行等が行われている。警察庁は、捜査協力の実施のほか、ICPOが開催する国際組織犯罪対策に関連する様々な会合への参加、事務総局等への職員の派遣、分担金の拠出等により、ICPOの活動に貢献している。

また、フランスに本部を置く事務総局の機能を補完する組織として平成27年(2015年)4月に設置されたシンガポール総局(IGCI)(注)では、サイバー犯罪対策、サイバーセキュリティ対策、加盟国の警察官やICPO職員の訓練等を行っている。

注:INTERPOL Global Complex for Innovationの略

 
第86回ICPO総会(©INTERPOL)
第86回ICPO総会(©INTERPOL)

CASE

日本人の男(64)らは、22年9月、覚醒剤合計約9.1キログラムを台湾から国際郵便で密輸入した。同男は日本国外に逃亡していたが、ICPOを通じて国際手配を行ったところ、29年6月、中国公安部から、同男を不法滞在で拘束し、退去強制とする旨の情報を得たため、同月、同男を覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)で逮捕した(警視庁)。

② 外国捜査機関との捜査協力

警察庁では、ICPOルートのほか、外交ルート、刑事共助条約(協定)(注)及び国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を活用して、外国捜査機関に対して捜査協力を要請するなどしている。

また、外国捜査機関との間で開催される二国間協議等に積極的に参加し、連携の強化を図っている。

注:229頁参照

(3)国外逃亡被疑者等(注1)の追跡

国外逃亡被疑者等の数の推移は、図表4-19のとおりである。

警察では、被疑者が国外に逃亡するおそれがある場合には、法務省入国管理局に手配するなどして、出国前の検挙に努めている。また、被疑者が国外に逃亡した場合には、関係国の捜査機関との捜査協力を通じ、被疑者の所在確認等を行っており、所在が確認された場合には、犯罪人引渡条約(注2)等に基づき被疑者の引渡しを受けるなどして、確実な検挙に努めている。

このような取組の結果、平成29年中は、出国直前の外国人被疑者23人のほか、国外逃亡被疑者124人(うち外国人77人)を検挙した。

また、事案に応じ、国外逃亡被疑者等が日本国内で行った犯罪に関する資料等を逃亡先国の捜査機関に提供するなどして、逃亡先国における国外犯処罰規定の適用を促し、犯罪者の「逃げ得」を許さないための取組を進めている。

注1:日本国内で犯罪を行い、国外に逃亡している者(以下「国外逃亡被疑者」という。)及びそのおそれのある者

注2:229頁参照

CASE

26年3月、我が国において女性を殺害し、同女性のクレジットカード等を強取するなどしたブラジル人の女(32)が犯行後に出国した。同年5月、同女が不法入国により中国で身柄を拘束されている旨の情報を得たことから、外交ルートを活用し、29年1月、同女の身柄の引渡しを受け、逮捕した(大阪)。

 
図表4-19 国外逃亡被疑者等数の推移(平成20〜29年)
図表4-19 国外逃亡被疑者等数の推移(平成20〜29年)
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