第2章 生活安全の確保と犯罪捜査活動

3 相談業務の充実強化

(1)相談取扱いの現状

相談取扱件数の推移及び相談内容については、図表2-8から図表2-10までのとおりである。平成29年中の相談取扱件数は208万2,239件と、前年より約5万9,000件(2.9%)増加し、近年増加傾向にある。主な相談内容としては、刑事事件、犯罪等による被害防止、家庭・職場・近隣関係に関するものなどが挙げられる。

 
図表2-8 相談取扱件数の推移(平成20~29年)
図表2-8 相談取扱件数の推移(平成20~29年)
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図表2-9 相談内容の内訳(平成29年)
図表2-9 相談内容の内訳(平成29年)
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図表2-10 主な相談内容とその推移(平成25~29年)
図表2-10 主な相談内容とその推移(平成25~29年)
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(2)相談受理体制

警察では、国民から寄せられた相談に対し、迅速・確実に組織的な対応を行うことができるよう、警視庁及び道府県警察本部並びに各警察署の総・警務部門にそれぞれ相談の総合窓口を設置している。

総合窓口には、警察職員のほか、経験豊富な元警察職員等の警察安全相談員の配置を進め、体制の充実に努めている。

また、警視庁及び道府県警察本部の総合窓口に全国統一番号の警察相談専用電話(「#9110」番(注))を設置し、電話をかければ発信地を管轄する警察本部等の総合窓口に接続されるようにしているほか、都道府県警察のウェブサイト上でも相談を受け付けている。

注:携帯電話からも利用できる。なお、ダイヤル回線及び一部のIP電話では利用できないので、相談専用の一般加入電話番号を警察庁ウェブサイト等で広報している。

 
「♯9110」番の広報活動
「♯9110」番の広報活動

(3)相談内容に応じた適切な対応の推進

① 相談への組織的な対応

寄せられた相談に対しては、犯罪等の被害の発生の有無にかかわらず、相談内容に応じて、関係する部署が連携して対応し、指導、助言、他の専門機関の教示、相手方への警告、検挙等、相談者の不安等を解消するために必要な措置を講じている。

相談者等の生命又は身体に危害が及ぶおそれのあるものなど緊急の対応を要する相談事案を認知した場合には、直ちに幹部へ報告して対応するなど、迅速かつ組織的な対応を強化している。

② 相談に対応する職員への研修の実施

多種多様な相談に適切に対応できる職員を育成するため、都道府県警察では、相談に対応する職員に対し、各部門の業務担当者による事案ごとの相談受理・対応要領の講義や様々な専門的知識を有する部外講師による講義等、実務に直結する研修を実施している。

③ 関係機関・団体等との連携の推進

警察以外の機関・団体等で取り扱うことが望ましい相談や警察以外の機関・団体等との緊密な連携が必要な相談への適切な対応を図るため、関係機関・団体等との連絡会議を開催して意見交換を行うなど、関係機関・団体等との連携強化に努めている。

CASE

平成29年2月、女性から「友人の孫が母親からいじめられているようだ」との相談を受理した。直ちに児童から事情聴取を行ったところ、同児童が母親から身体的虐待及び心理的虐待を受けていることが判明した。同児童に更なる危害が及ぶおそれがあったことから、児童相談所に通告した結果、同児童相談所による一時保護がなされたことなどにより、同児童の安全を確保した(福井)。

CASE

29年8月、男性から「暴力団構成員を名のる男から、知人に貸した金銭の返済の一部を免除するよう要求された」との相談を受理した。同年9月、稲川会傘下組織構成員の男(51)に対し、暴力団対策法(注1)に基づき、暴力的要求行為(注2)を行ってはならない旨の中止命令を発出した(青森)。

注1:暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律

注2:指定暴力団の暴力団員が指定暴力団の威力を示して行う不当な金品等の要求行為

(4)認知症に係る行方不明者等への対策

平成29年中の認知症に係る行方不明者届の受理件数は1万5,863件であり、統計をとり始めた24年以降、増加を続けている。

警察では、地域における認知症高齢者等の見守りネットワークの活用や、関係機関・団体等と緊密に連携した行方不明者発見活動を推進しているほか、認知症サポーター養成講座等の部外有識者による講習会や捜索模擬訓練等を通じて、認知症の特性や認知症に係る行方不明者を発見した場合の対応要領等について、職員の理解を深める取組を行っている。

 
捜索模擬訓練の状況
捜索模擬訓練の状況
 
図表2-11 認知症に係る行方不明者届の受理件数の推移(平成25~29年)
図表2-11 認知症に係る行方不明者届の受理件数の推移(平成25~29年)
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