特集 国際テロ対策

1 国際テロ対策の今後の課題と取組

(1)国際協力の推進

国際テロの脅威が国境を越えて広がっていることに加え、国境という概念がないサイバー空間で、インターネットを通じて過激思想の伝播(でんぱ)や過激派組織への勧誘が行われていることなどから、国境を越えて活動するテロリストの情報を一国だけで把握し、対策を講ずることは難しく、テロを一国だけで防ぐことには限界がある。

そこで、国際テロを未然に防止するためには、国際社会が一丸となってテロ対策を進める必要があり、各国治安情報機関との信頼関係の構築及び情報交換の強化、水際対策の徹底等、国際社会と連携したテロ対策を一層推進しなければならない。

警察では、警察庁職員の各国治安情報機関等への出張の機会の拡充や、各国治安情報機関幹部の我が国への招へい等により、各国治安情報機関との間で密接な連絡体制を構築し、テロ関連情報の収集・分析を更に強化している。加えて、テロ対策に関する国際会議等により積極的に参加することなどにより、テロ対策に関する国際協力を更に推進することとしている。

(2)テロ対策を推進するための治安基盤の強化

テロに関する情報は断片的で、その真偽や価値が個々の情報からだけでは容易に判断できないものが多い。そのため、情報収集活動、捜査活動、警戒活動等のあらゆる警察活動を通じて得られた情報を警察庁において集約し、分析するとともに、テロの未然防止に向けてこれを活用する必要がある。

また、海外においてイスラム過激派によるテロ事件が相次いでいる状況を踏まえると、収集したテロ関連情報を的確に分析するためには、イスラム過激派組織等に関して、言語、社会、情勢、テロの手法等に精通した人材が必要である。そこで、テロ対策に関する知識等の実践的な教育や訓練の実施に加え、職員に外国語や外国文化を習得させることなどを通じ、人的基盤の強化を推進することとしている。

さらに、最先端技術を活用した装備資機材の高度化、最新の情勢を踏まえた新たな装備資機材の研究・開発を推進するなど、物的基盤の強化も推進することとしている。

(3)新たなテロ対策の導入の検討

我が国では、米国における同時多発テロ事件以降、国際テロリスト財産凍結法を制定するなど、テロ対策に係る様々な法令の改正等に取り組んできた。他方、諸外国においても、各国の実情に応じてテロ対策に関する組織や制度が整備されているところ、それらの中には我が国にはないものも見受けられる。

近年の厳しい国際テロ情勢を踏まえ、警察においても、諸外国の組織や制度と、我が国の組織や制度を比較しつつ、新たなテロ対策の導入について引き続き検討を進めていくこととしている。



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