特集 国際テロ対策

第1部 特集・トピックス
特集 国際テロ対策

特集に当たって

本年の警察白書の特集テーマは、「国際テロ対策」です。

平成13年9月11日に発生した米国における同時多発テロ事件は、約3,000人の犠牲者を出し、その国籍も我が国を含め約80か国に上るなど、イスラム過激派のテロの脅威を多くの国々に認識させることになりました。そして、28年はこの同時多発テロ事件の発生から15年目の年となります。

この間、警察では、16年に警察庁に外事情報部を新設し、それまで外事課に置かれていた国際テロリズム対策室を課に発展的に改組するなど、国際テロ対策を強化し、

○テロの脅威に係る情報収集・分析等の強化

○重要施設等の警戒警備の徹底

○官民一体の「日本型テロ対策」の推進

等の様々な取組を行ってきました。

他方で、27年1月及び2月に、シリアにおいて邦人2人が犠牲となる邦人殺害テロ事件が発生したことに加え、同年11月に発生したフランス・パリにおける同時多発テロ事件では多数の犠牲者が出るなど、世界各地でテロが発生している状況にあり、我が国に対するテロの脅威は現実のものとなっています。

我が国では、31年にはラグビーワールドカップ大会が、32年には2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。中でも、夏季オリンピック・パラリンピック競技大会が我が国で開催されるのは、昭和39年以来2度目、56年ぶりのことです。

オリンピック・パラリンピック競技大会は、世界中から多数の要人、選手団、観客等が集まるなど、国際的な注目度の極めて高い行事であり、これらの機会を狙った国際テロへの対策に万全を期す必要があります。

国民の安全を確保し、国際社会のテロ対策の一翼を担うという観点からも、警察としてテロの未然防止及び万一テロが発生した場合の対応に万全の体制を整備することは、重要な責務です。警察では、情報収集・分析の強化によりテロの未然防止対策を講ずるとともに、テロ対処部隊の充実強化により事態対処能力の向上を推進しています。

この特集では、まず第1節で国際テロ情勢の推移とサイバー空間における脅威を概観し、第2節で警察が取り組んでいる国際テロ対策や諸外国の国際テロ対策を紹介します。そして、第3節で今後の警察の国際テロ対策を展望するとともに、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えたテロ対策について記述します。

テロの発生を未然に防止するためには、警察による取組だけでは十分ではなく、国民の理解と協力を得て、官民が一体となってテロ対策を推進することが不可欠です。この特集が、国民の皆様の警察の取組に対する理解を深めるとともに、今後の国際テロ対策について考えていただく一助となれば幸いです。



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