第7章 警察活動の支え

3 警察の情報通信

(1)警察活動を支える警察情報通信

警察では、事件、事故及び災害がどこでどのように発生しても対応できるよう、各種の情報通信システムを開発し、それらを全国に整備するとともに、システムの高度化に努めている。

具体的には、独自に整備・維持管理している無線多重回線、電気通信事業者の専用回線、衛星通信回線等により構成される全国的なネットワークにより、警察庁、管区警察局、警察本部、警察署、交番等を結ぶほか、

・ 車載通信系(警察本部を中心に警察署、パトカー、警察用航空機等を結ぶ無線通信系)

・ 署活系(警察署を中心に所属する警察官を結ぶ無線通信系)

・ 携帯通信系(機動隊による部隊活動等、局所的な警察活動での無線通信系)

といった各種の移動通信システムを構築することにより、警察業務を遂行する上で不可欠な情報の伝達を実現している。

また、指名手配被疑者、行方不明者、盗難車両等に関する情報を警察庁に登録することにより、第一線の警察官からの照会に即時に回答したり、運転免許証に関する情報を全国一元管理することにより、運転免許証の不正取得を防止したりするための警察情報管理システムを全国に構築することで、第一線の警察活動の支援や各種業務の効率化を図っている。

これら警察情報通信の円滑な運営を図るため、国の機関である全国の情報通信部(注)に、情報通信に関する専門的な技術を有した職員を配置している。

注:管区警察局情報通信部、東京都警察情報通信部、北海道警察情報通信部、府県情報通信部及び方面情報通信部
 
図表7-9 警察活動を支える警察情報通信
図表7-9 警察活動を支える警察情報通信

(2)機動警察通信隊の活動

全国の情報通信部には機動警察通信隊が設置されており、現場の警察活動の基盤となる通信を確保等するための様々な活動を行っている。具体的には、警衛・警護警備の実施時や事件、事故又は災害発生時に、警察本部と現場警察官との間の指揮命令や連絡等が円滑に行われるよう、無線の不感地帯対策のほか現場映像の伝送等の各種情報通信対策を講じている。

平成27年においては、5月の石川県における天皇皇后両陛下「第66回全国植樹祭」御臨場等に伴う警衛警備、7月の東京都調布市内の住宅地における軽飛行機墜落事故、9月の関東及び東北地方における豪雨災害等の際に出動した。

 
軽飛行機墜落事故現場から伝送された映像
軽飛行機墜落事故現場から伝送された映像

コラム 災害現場で活躍する機動警察通信隊

平成27年9月関東・東北豪雨において、宮城県、茨城県、栃木県を始めとする各県情報通信部、東京都警察情報通信部並びに東北及び関東管区警察局情報通信部の機動警察通信隊は、発災直後から災害現場に出動した。機動警察通信隊は、現場の状況把握や広域緊急援助隊等の指揮のために、衛星通信車やヘリコプターテレビシステム等を活用して、河川堤防の決壊により広範囲に冠水した被災現場の状況や広域緊急援助隊による捜索救助活動の状況等の映像をリアルタイムで警察本部、警察庁、首相官邸等に伝送した。

 
救助状況の撮影
救助状況の撮影
 
捜索現場から伝送された映像
捜索現場から伝送された映像

(3)情報管理の徹底

警察では多くの機密情報を取り扱っていることから、警察庁は、警察情報セキュリティポリシー(注1)の策定等により、情報セキュリティの向上のための総合的な対策を進めている。具体的には、警察内部ネットワークの外部ネットワークからの分離、外部記録媒体の利用制限等の情報流出等を防ぐための技術的環境を整備するとともに、警察職員の情報の取扱いに係る規範意識の向上のための取組を推進している。

また、警察庁及び全都道府県警察にCSIRT(注2)を設置し、警察情報管理システム等において情報セキュリティインシデント(注3)が発生した場合に、迅速かつ的確な情報の集約・分析、被害拡大を防止するための措置等を実施することとしている。さらに、これらの取組の実効性等を検証するため、都道府県警察等を対象とした監査を継続的に実施している。

注1:警察情報セキュリティに関する規範の体系
注2:Computer Security Incident Response Teamの略
注3:不正プログラム感染事案等情報セキュリティの維持を困難とする事案


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