第6章 公安の維持と災害対策

3 右翼等の動向と対策

(1)右翼の動向

① 批判活動の展開

右翼は、平成27年中、領土問題、歴史認識問題等を捉え、活発な街頭宣伝活動等に取り組んだ。

 
右翼の街頭宣伝活動(12月、東京)
右翼の街頭宣伝活動(12月、東京)

中国をめぐっては、同年10月、いわゆる南京事件に関係する文書がユネスコ記憶遺産(注)に登録されたことや、中国公船が尖閣諸島周辺の領海に繰り返し侵入していることを捉えた活動を行った。北朝鮮をめぐっては、拉致問題、とりわけ拉致被害者等の再調査に対する北朝鮮の消極的な姿勢を捉えた活動を行った。韓国をめぐっては、同年7月、「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録に係る審議において、朝鮮人の強制徴用に関係する施設があるなどと韓国が主張したことや竹島問題等を捉えた活動を、ロシアをめぐっては、北方領土問題等を捉えた活動をそれぞれ行った。右翼は、これらの活動により、関係国、日本政府等を批判した。

右翼が上記の街頭宣伝活動等に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、図表6-2のとおりである。

注:手書き原稿、書籍、ポスター、図画、地図、音楽、写真、映画等の記録遺産を対象として、世界的重要性を有する物件をユネスコ(国連教育科学文化機関)が認定・登録する事業
 
図表6-2 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成27年)
図表6-2 右翼による街頭宣伝活動等に伴う動員数(平成27年)
Excel形式のファイルはこちら
② 右翼関係事件の状況

27年中、「テロ、ゲリラ」事件の発生はみられなかった。

近年の右翼による違法行為の検挙状況の推移は、図表6-3のとおりである。

 
図表6-3 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成23~27年)
図表6-3 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成23~27年)
Excel形式のファイルはこちら

このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況並びに右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は図表6-4のとおりである。

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件
 
図表6-4 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成27年)
図表6-4 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成27年)
Excel形式のファイルはこちら

(2)右翼対策の推進

① テロ等重大事件の未然防止に向けた違法行為の検挙

警察では、右翼によるテロ等重大事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

 
街頭宣伝活動に対する取締り状況
街頭宣伝活動に対する取締り状況

事例

政治団体幹部(64)は、平成27年1月から同年7月にかけて、業として借受人2人に金銭の貸付けを行うに当たり、貸付金を振込入金する際に貸付名目額から利息を天引きする方法により、法定利息を上回る利息を受領した。27年9月、出資法違反で同人を検挙した(兵庫)。

② 街頭宣伝車対策の推進

警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。

 
図表6-5 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成27年)
図表6-5 街頭宣伝活動に対する取締り状況(平成27年)
Excel形式のファイルはこちら

(3)右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応

平成27年中、在特会(注)を始め、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動する右派系市民グループは、韓国や北朝鮮との問題等を捉えたデモや街頭宣伝活動等に各地で取り組み、全国におけるデモは約70件に及んだ。

また、右派系市民グループの活動に対して抗議する勢力(以下「反対勢力」という。)が、一部の参加者による過激な言動について、「ヘイトスピーチ」であると批判するなどして、抗議行動に取り組んだ。

このような情勢の下、28年6月、本邦外出身者に対する不当な差別的言動が許されないことを宣言し、その解消に向けた取組の基本理念を定めることなどを内容とする本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律が施行されるなど、ヘイトスピーチに対する社会の関心が一層高まっている。

警察は、引き続き、右派系市民グループと反対勢力とのトラブルに起因する違法行為の未然防止の観点から、厳正公平な立場で必要な警備措置を講じ、違法行為を認知した場合には、法と証拠に基づき厳正に対処するとともに、警察職員に対する必要な教育を推進することとしている。

注:在日特権を許さない市民の会
 
右派系市民グループのデモ(12月、東京)
右派系市民グループのデモ(12月、東京)

事例

右派系市民グループの男(52)は、26年9月、都内の路上においてデモ行進中、デモに反対する男性を金属製の棒で突くなどした。27年5月、同人を暴行罪で逮捕した(警視庁)。



前の項目に戻る     次の項目に進む