第4章 組織犯罪対策
第1節 暴力団対策
1 暴力団情勢
暴力団は、繁華街や住宅街における拳銃を使用した凶悪な犯罪や、自らの意に沿わない事業者を対象とする、報復・見せしめ目的の襲撃等事件を敢行したり、組織の継承等をめぐって銃器を用いた対立抗争事件を引き起こしたりするなど、自己の目的を遂げるためには手段を選ばない凶悪性が見られ、依然として社会にとって大きな脅威となっている。
また、近年、暴力団は伝統的な資金獲得活動や民事介入暴力、行政対象暴力等に加え、その組織実態を隠蔽しながら、建設業、金融業、産業廃棄物処理業や証券取引といった各種の事業活動へ進出して、企業活動を仮装したり、共生者(注)を利用したりするなどして、一般社会での資金獲得活動を活発化させている。
さらに、公共事業に介入して資金を獲得したり、各種公的給付制度等を悪用した詐欺事件を多数敢行したりするなど、社会経済情勢の変化に応じた多種多様な資金獲得活動を行っている。
警察では、社会経済情勢の変化にも留意しつつ、暴力団犯罪の取締り、暴力団対策法の効果的な運用及び暴力団排除活動を推進している。
(1)暴力団構成員及び準構成員等の推移
暴力団構成員及び準構成員等(注1)の推移は、図表4-1のとおりであり、その総数は、平成17年から減少している。
また、主要団体(注2)の暴力団構成員及び準構成員等の総数に占める割合は7割以上に及んでいるが、暴力団構成員及び準構成員等の総数の半数弱を占めていた六代目山口組の分裂に伴い、一極集中の状態に変化が生じている。
注2:26年までは、六代目山口組、住吉会及び稲川会をいい、27年については、六代目山口組、神戸山口組、住吉会及び稲川会をいう。

(2)暴力団の解散・壊滅
平成27年中に解散・壊滅した暴力団の数は147組織であり、これらに所属していた暴力団構成員の数は743人である。このうち主要団体の傘下組織の数は122組織(83.0%)であり、これらに所属していた暴力団構成員の数は630人(84.8%)である。
(3)暴力団の指定
平成28年6月1日現在、暴力団対策法の規定に基づき22団体が指定暴力団として指定されており、27年中は、松葉会が8回目、三代目福博会が6回目の指定を受けた。また、28年4月には、新たに神戸山口組が指定を受けた。

コラム 準暴力団に関する実態解明及び取締りの強化等
近年、繁華街・歓楽街等において、暴走族の元構成員等を中心とする集団に属する者が、集団的又は常習的に暴行、傷害等の暴力的不法行為等を行っている例がみられる。こうした集団は、暴力団と同程度の明確な組織性は有しないが、暴力団等の犯罪組織との密接な関係がうかがわれるものも存在する。警察では、こうした集団を準暴力団と定義し、実態解明の徹底及び違法行為の取締りの強化等に努めている。
事例
準暴力団チャイニーズドラゴンの幹部の男(37)らは、25年11月から27年1月までの間、1都5県の貴金属店舗において、金等のメッキを施し、タングステン合金等を主成分とするネックレスを18金製ネックレスに装って売却し、合計約6,100万円をだまし取った。同年12月までに、同男ら3人を詐欺罪で逮捕した(警視庁・沖縄)。