特集:変容する捜査環境と警察の取組 

第5節 今後の展望

戦後、警察は、自らの責任において国民のために捜査を遂行する第一次捜査機関となった。以来、警察捜査は、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するための刑事司法手続上の役割を果たすだけでなく、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序を維持するという警察の責務を遂行する上で、重要な役割を果たしている。このことは、いかに捜査環境が変容しようとも変わることはない。本節では、警察捜査に関する意識調査の結果を踏まえつつ、今後の警察捜査について展望する。

1 警察捜査に関する国民の意識

警察捜査に関する意識調査(注)の結果を基に、国民が治安や警察捜査に対する協力についてどのように感じているかなど、警察捜査に関する国民の意識について分析する。

注:6頁参照

(1)国民の体感治安

国民の体感治安については、図表-61のとおり、半数以上が「どちらとも言えない」と回答しているものの、「とても良くなった」又は「良くなった」と回答している者より「悪くなった」又は「とても悪くなった」と回答した者が多く、犯罪情勢が一定の改善をみせているにもかかわらず、国民の体感治安は改善していないことがうかがわれる。

 
図表-61 日本の治安についてどう思うか
図表-61 日本の治安についてどう思うか
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(2)警察捜査への協力

警察捜査に対する協力については、図表-62のとおり、約9割が「実際に警察から捜査協力を求められた際、捜査に協力した」と回答し、また、図表-63のとおり、約9割が警察捜査への協力について肯定的に回答しており、我が国においては、多くの国民が、警察捜査に対する協力について肯定的であることがうかがわれる。

 
図表-62 実際に警察から捜査協力を求められた際、捜査に協力したか(過去5年間)
図表-62 実際に警察から捜査協力を求められた際、捜査に協力したか(過去5年間)
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図表-63 警察の捜査への協力についてどう思うか
図表-63 警察の捜査への協力についてどう思うか
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(3)警察捜査への理解

① 防犯カメラ画像の犯罪捜査への活用

防犯カメラ画像の犯罪捜査への活用については、図表-64のとおり、約9割が「事件解決のため活用すべき」又は「事件解決のためどちらかといえば活用すべき」と回答しており、警察が犯罪捜査のために行う防犯カメラ画像の収集・分析について、国民の理解が得られていることがうかがわれる。

 
図表-64 防犯カメラ画像を事件解決のために活用すべき
図表-64 防犯カメラ画像を事件解決のために活用すべき
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② DNA型データベース

DNA型データベースについては、図表-65のとおり、約8割が「犯罪者については、必ずDNA型データを保有すべき」と回答している。我が国では、DNA型鑑定資料については、捜査において必要となった被疑者から採取するのみにとどまっているが、国民がDNA型データベースの更なる拡充と犯罪捜査への活用について期待していることがうかがわれる。

 
図表-65 警察が保有するDNA型データについて
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(4)取調べの録音・録画

取調べの録音・録画については、図表-66のとおり、「法律の専門家でない一般の市民が裁判員裁判に参加したときに、犯人と捜査員のやりとりが確認できて、分かりやすい」といったメリットがあるものと捉えられている。一方、「暴力団など組織犯罪の犯人が、組織による報復を受けることをおそれるなどして、共犯者や上位者、首謀者について話さなくなり、首謀者の検挙が困難になる」、「性犯罪等の犯人が、被害者の名誉やプライバシーを害するような供述をした場合も記録化されてしまう」といったデメリットも指摘されている。

 
図表-66 取調べの録音・録画について
図表-66 取調べの録音・録画について
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 第5節 今後の展望

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