第5章 安全かつ快適な交通の確保 

2 交通事故死者数の減少幅が縮小している背景

死者数は、平成13年以降一貫して減少しているが、近年は減少幅が縮小し、また、致死率(注)については22年以来、3年ぶりに増加に転じている。その背景としては、以下の要因が考えられる。

注:致死率=死者数÷死傷者数×100

 
図表5-3 致死率及び死者数の推移(平成16~25年)
図表5-3 致死率及び死者数の推移(平成16~25年)
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(1)高齢者の人口の増加

高齢者は、他の年齢層に比べて致死率が6.6倍(25年)と高く、図表5-4のとおり、死者数全体の半数以上を占めている。近年、他の年齢層の人口が減少していく一方、高齢者の人口が年々増加し、高齢者の交通事故死者数が減りにくくなっていることが、死者数の減少幅が縮小している一因と考えられる。

 
図表5-4 高齢者及び高齢者以外の死者数の推移(平成16~25年)
図表5-4 高齢者及び高齢者以外の死者数の推移(平成16~25年)
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(2)エアバッグ装着車率、シートベルト着用者率等の頭打ち

平成25年中のシートベルト非着用者の致2,000死率は着用者の15倍以上であり、シートベルトの着用が交通事故の被害軽減に寄与していると認められる。図表5-5のとおり、シートベルト着用者率は、最近は90%台前半で横ばい状態にある。また、エアバッグ装着車率は平成17年までにほぼ100%、ABS(注)装着車率は24年までに97.6%まで上昇した。これまでの向上が自動車乗車中の死者数減少に大きく寄与してきたものの、近年、エアバッグ装着車率、シートベルト着用者率等が頭打ちとなっていることが、死者数の減少幅が縮小している一因と考えられる。

注:Antilock Brake Systemの略

 
図表5-5 シートベルト着用者率等の推移(平成16~25年)
図表5-5 シートベルト着用者率等の推移(平成16~25年)
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(3)飲酒運転による交通事故件数の下げ止まり

自動車等の運転者(第1当事者)の飲酒運転による事故の死亡事故率は、他と比べて8.2倍(25年)と高い。飲酒運転による交通事故件数は、平成14年以降、累次の飲酒運転の厳罰化、飲酒運転根絶に対する社会的気運の高まり等により大幅に減少してきたが、20年以降は減少幅が縮小し、下げ止まり傾向にあることが、死者数の減少幅が縮小している一因と考えられる。

 
図表5-6 飲酒運転による交通事故の構成率及び死者数の推移(平成16~25年)
図表5-6 飲酒運転による交通事故の構成率及び死者数の推移(平成16~25年)
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 第1節 平成25 年の交通事故情勢

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