第6章 警察活動の支え
第1節 警察活動の基盤
1 警察の体制
(1)定員
平成25年度の警察職員の定員は総数29万3,588人であり、このうち7,721人が警察庁の定員、28万5,867人が都道府県警察の定員(注)である。
(2)警察力強化のための取組
地方警察官(注1)については、平成13年度から24年度までの間に合計2万8,266人の増員を行ってきた(注2)ところ、刑法犯認知件数が15年以降10年連続して減少するなど、地方警察官の増員は、他の施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる。
しかしながら、特に九州北部において、事業者襲撃等事件や対立抗争事件が相次いで発生するなど、暴力団情勢は極めて厳しい状況にあるほか、サイバー犯罪の脅威の深刻化等新たな治安の脅威に直面するなど、犯罪情勢は依然として厳しく、引き続き、あらゆる角度から警察力の強化に努める必要がある。そのため、警察としては大量退職期が到来していることを踏まえつつ、次のような警察力強化のための取組を強力に推進し、厳しい治安情勢に的確に対応することとしている。
注2:東日本大震災に伴う岩手県、宮城県及び福島県警察に対する750人の増員(平成23年度)を含む。
① 地方警察官の増員
25年度には、サイバー空間の安全確保のための体制強化、検視体制の強化及び暴力団対策を強化するための体制強化を図るため、地方警察官545人の増員を行った(注)。
② 退職警察職員の積極的活用
交番相談員、捜査技能伝承官等の非常勤職員を拡充し、また、再任用制度を積極的に活用することで、即戦力たる退職警察職員により現場執行力を補完するとともに、経験豊富な警察職員の優れた技能を若手警察職員に伝承している。
③ 優秀な人材確保のための採用募集活動への支援
警察庁では、警察官という職業の魅力をアピールするため、合同企業説明会への参加、警察庁ウェブサイトや民間の就職サイトを通じた情報提供等を行い、都道府県警察の採用募集活動を支援している。
警察庁ウェブサイト(都道府県警察採用コンテンツ)
(3)女性警察官の採用・登用の拡大
意欲と能力のある女性を採用するため、各都道府県警察では、女性警察官を就職説明会に派遣するなど、女性を対象とした採用募集活動を積極的に行っている。警察庁では、女性警察官採用募集パンフレットを作成するなど、各都道府県警察の活動を支援している。
女性警察官採用募集パンフレット
女性警察官の幹部への登用も進んでおり、都道府県警察で採用され、警部以上の階級にある女性警察官は、平成25年4月1日現在、254人で(注)、警察署長を始め、警察署の刑事課長等にも登用されている。
こうした女性警察官の採用・登用の拡大に伴い、警察では、交番に女性用仮眠施設を整備したり、ベビーシッターを利用する際の補助を導入したりするなど、女性が働きやすい職場環境づくりに取り組んでいる。
さらに、警察庁では、23年2月、警察官の質の確保と男女共同参画社会の実現等のため、都道府県警察に対して、女性警察官の採用・登用の拡大に向けた計画を策定するよう指示したところ、全ての都道府県警察において、定員に占める女性警察官の割合を35年4月時点で約10%(全国平均)とする目標等を盛り込んだ計画が策定された。今後、こうした目標を前倒しで達成するとともに、女性警察官の配置可能ポストの見直しや育児休業取得者に対する支援強化等を通じて、能力・実績に応じた積極的な人材登用や女性職員が更に働きやすい職場づくりを推進することとしている。
(4)教育訓練
警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。
① 警察学校における教育訓練
都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。
②職場における教育訓練
警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、適切な職務執行を行うとともに、高い倫理観を培うため、有識者による講習会等を行っている。
③ 術科訓練の充実強化
凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、拳銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター(注)等による拳銃訓練を始め、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。
映像射撃シミュレーター
実践的な総合訓練
(5)警察官の殉職・受傷
警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。平成24年中には、交通違反車両を白バイで追跡中の交通機動隊の警察官が、対向車線から横断右折して来た車両と衝突し、殉職する事案等が発生した。
警察では、殉職・受傷した警察官又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、果敢な職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。