第4節 災害への対処と警備実施
1 災害への対処
(1)自然災害の発生状況と警察活動
平成24年中は、地震、大雨、台風、強風及び高潮により、死者・行方不明者50人、負傷者937人等の被害が発生した。20年から24年にかけての自然災害による主な被害状況は、表5-8のとおりである。

24年中は、「平成24年7月九州北部豪雨」が発生したほか、25個の台風が発生し、うち2個が日本に上陸し、17個が接近した。これらの大雨、台風等の風水害により、死者44人、行方不明者4人等の被害が発生した。
ア 「平成24年7月九州北部豪雨」
7月11日から14日にかけて、梅雨前線が本州付近に停滞し、特に九州北部では、記録的な大雨となった。この大雨により、土砂災害等が発生し、死者30人、行方不明者2人、負傷者26人等の被害が生じた。
熊本県警察、福岡県警察、大分県警察を始めとする関係県警察は、災害警備本部等を設置するとともに、熊本県警察は最大時約2,200人体制で、福岡県警察は最大時約2,200人体制で、大分県警察は最大時約1,000人体制で、それぞれ被災現場に機動隊等を出動させ、被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索等を実施した。
また、福岡、佐賀及び宮崎の各県警察は、広域緊急援助隊約140人を、熊本県警察に派遣した。

広域緊急援助隊による行方不明者の捜索状況(熊本県阿蘇市一の宮町)

機動隊等による行方不明者の捜索状況(大分県中津市)
イ 台風第17号
9月21日に発生した台風第17号は、30日午後に愛知県東部に上陸し、関東甲信地方及び東北地方を通過した。この台風により、全国で死者1人、負傷者172人等の被害が発生した。
関係都府県警察では、災害対策本部等を設置するとともに、機動隊等を被災現場へ出動させ、被災者の救出救助等を実施した。
(2)災害への対処体制の強化
① 警察災害派遣隊の概要
従来、警察では、災害発生直後の救出救助等の災害応急対策を想定した部隊編成・運用を行ってきた。しかし、平成23年3月に発生した東日本大震災では、津波や原子力災害等に対応するため、長期間にわたり大規模な部隊派遣を行うこととなった。この経験を踏まえ、24年5月、これまで大規模災害発生時に全国から直ちに被災地へ派遣してきた即応部隊を最大約1万人体制に拡充するとともに、災害対応が長期化する場合に派遣する一般部隊を新たに設置し、両部隊から成る警察災害派遣隊を新設した。
警察災害派遣隊は、装備資機材の整備、実践的な合同訓練の実施等により対処能力の向上に努めている。

特別救助班の訓練状況
② 広域緊急援助隊特別救助班の活動等
警察では、12都道府県警察(注1)の広域緊急援助隊に極めて高度な救出救助能力を持つ特別救助班(P-REX(注2))を設置し、災害現場に派遣している。
特別救助班は、平素から高性能な救出救助用資機材、警察用航空機等を活用した実践的訓練、災害・医療等の専門機関による教育等により各種災害事例等を踏まえた効果的な救出救助方法の習得と練度の向上に努めているほか、部隊指揮要領の実践的訓練等を実施して、指揮官の指揮能力の向上を図っている。
また、警視庁では、同年9月、特別救助班の経験者を中心に、重機操作等の救出救助に関する特殊技能に習熟した特殊救助隊(SRT(注3))を設置するなどし、首都直下地震等の大災害に備えている。
注2:Police Team of Rescue Expertsの略
注3:Special Rescue Teamの略

