第4章 安全かつ快適な交通の確保

3 高齢者の交通安全に向けた取組

(1)高齢者が関係する交通事故の状況

高齢者の死者数は、高齢者人口の増加等に伴って、昭和50年代前半から増加傾向を示し、平成5年には若者を上回り、年齢層別で最多となった。その後、7年(3,241人)をピークにおおむね横ばいで推移し、14年以降毎年減少している。しかしながら、過去10年間の推移をみると、子供(注1)(14年の0.35倍)、若者(同0.29倍)、25歳以上29歳以下の者(同0.29倍)等、他の年齢層の減少率と比較して、高齢者(同0.72倍)の減少率は低くなっている。こうしたことから、死者数全体に占める高齢者の割合は年々増加し、15年に初めて4割を超え、24年には総人口に占める高齢者人口の割合である24.1%(24年10月1日現在推計人口値(注2))の2倍を超える51.3%に至っている。

注1:15歳以下の者
注2:総務省資料による。
 
図4-9 年齢層別死者数の推移(昭和45~平成24年)
図4-9 年齢層別死者数の推移(昭和45~平成24年)
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死傷者数を年齢層別・被害程度別にみると、高齢者の占める割合は、軽傷者では12.5%であるのに対して、重傷者では32.5%、死者では51.3%となっており、被害程度が深刻になるほど高齢者の占める割合が高くなっている。

また、24年中の高齢者の死者数を状態別にみると、歩行中が最も多く半数近く(49.0%)を占めており、自転車乗用中(16.1%)と合わせると、高齢者の死者数の約3分の2を占める。

今後我が国の高齢化が急速に進むことを踏まえると、高齢者の交通事故対策により一層取り組んでいく必要があり、対策に当たっては、高齢歩行者・自転車乗用者対策が重要な課題となっている。

 
図4-10 年齢層別死傷者の状況(構成率)(平成24年)
図4-10 年齢層別死傷者の状況(構成率)(平成24年)
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図4-11 高齢者の状態別死者数(平成24年)
図4-11 高齢者の状態別死者数(平成24年)
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(2)高齢歩行者・自転車乗用者の事故防止対策

平成24年中の高齢者の死者数のうち、歩行中・自転車乗用中の死者の約8割は運転免許を保有していなかった。

警察では、老人クラブ等に加入していない、運転免許を保有していないなど、特に交通安全教育を受ける機会が少ない高齢者に歩行者及び自転車乗用者として道路の安全な通行方法等を理解させるため、平素から高齢者と接する機会の多い民生委員等の福祉関係者を始め地域の関係機関・団体等と協力して、家庭訪問による個別指導や高齢者が日常的に利用する機会の多い医療機関や福祉施設等における広報啓発活動を行っている。

 
高齢者宅訪問による交通安全指導
高齢者宅訪問による交通安全指導

24年中の歩行者・自転車乗用者の死者数を自宅からの距離別にみると、他の年齢層と比較して、高齢者は居住地の近くで発生する交通事故により死亡することが多いことから、居住する地域における交通事故等の身近な実例を挙げた交通指導を行っている。

また、24年中の高齢者の歩行中の時間帯別死者数をみると、高齢者以外の歩行中の時間帯別死者数に比べて、17時から20時にかけて特に多いという特徴が認められる。そこで、交通事故の多い薄暮の時間帯における高齢者の保護・誘導活動、明るく目立つ色の衣服の着用や反射材用品等の普及促進といった、地域に密着した交通安全活動を行っている。

さらに、加齢に伴う身体機能の変化が歩行者又は自転車乗用者としての交通行動に及ぼす影響や、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践の必要性への理解を促進するため、各種教育用器材を積極的に活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を実施している。

 
図4-12 歩行者・自転車乗用者の死者数の自宅からの距離別割合(平成24年)
図4-12 歩行者・自転車乗用者の死者数の自宅からの距離別割合(平成24年)
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図4-13 高齢歩行者時間帯別死者数(平成24年)
図4-13 高齢歩行者時間帯別死者数(平成24年)
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高齢者に対する交通安全教室
高齢者に対する交通安全教室

コラム① 都道府県警察の取組

(1)高齢者を対象とした家庭訪問による個別指導

富山県警察では、緊急雇用創出事業により非常勤嘱託員12人を雇用し、高齢者宅訪問による振り込め詐欺に遭わないための指導やチラシの配布にあわせて、交通事故防止に関する指導や反射材用品の配布を行うなど、高齢者の安全で安心な暮らしのための取組を実施している。

 
高齢者宅訪問活動
高齢者宅訪問活動

(2)シルバーナイトスクールの実施

新潟県警察では、高齢者の夜間の交通事故防止を図るため、高齢者を対象とした参加・体験・実践型の交通安全教育として「シルバーナイトスクール」を夜間に実施し、反射材の効果や服装の色の違いによる視認性の違いについての実験を実施するなどして、反射材用品の積極的な活用や夜間外出時における明るく目立つ色の服装の着用を呼び掛けている。

 
シルバーナイトスクールの実施状況
シルバーナイトスクールの実施状況

(3)高齢者を対象とした自転車大会の実施

広島県警察では、自転車競技を通じて自転車の安全走行に関する知識と技能の習得を図るため、県下の高齢者を対象として、自転車の交通法規等に係る学科試験と正しい交差点の通行方法等に係る技能試験による「高齢者交通安全自転車大会」を開催している。

 
高齢者交通安全自転車大会
高齢者交通安全自転車大会


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