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トピックスII 犯罪インフラ対策の推進


 警察では、将来の我が国の治安を見据えて、関係機関・団体等と連携した総合的な犯罪インフラ対策を推進しています。

 犯罪インフラとは、犯罪を助長し、又は容易にする基盤のことをいい、不法滞在者等に在留資格を不正取得させる手段となる偽装結婚・偽装認知等のようにその行為自体が犯罪となるもののほか、それ自体は合法であっても、詐欺等の犯罪に悪用されている各種制度やサービス等があります。こうした犯罪インフラは、あらゆる犯罪の分野で着々と構築され、治安に対する重大な脅威となっています。警察では、平成23年3月、「犯罪インフラ対策プラン」を策定し、警察組織の総力を挙げた対策を推進しています。
 
図II-1 犯罪インフラの実態
図II-1 犯罪インフラの実態

(1)体制の構築

 警察庁では、平成23年2月7日に警察庁次長を長とする「犯罪のグローバル化・犯罪インフラ対策委員会」を設置するとともに、その下に「犯罪インフラ対策室」を設置し、犯罪インフラに関する情報の集約・分析や都道府県警察に対する指導等を行っています。
 また、全ての都道府県警察において、犯罪インフラ対策を総合的に推進するための警察本部長等を長とする対策委員会、犯罪インフラ対策を部門横断的に実施するための対策室等が設置されています。
 
図II-2 犯罪インフラ対策プランの概要
図II-2 犯罪インフラ対策プランの概要

(2)実態解明の推進

 犯罪インフラは、社会の様々な分野に張り巡らされていることから、あらゆる警察活動を通じて情報を収集・分析し、取締り等の対策に還元しています。
 また、社会情勢等の変化に応じて新たな犯罪インフラが出現し得るほか、既存の制度等が犯罪インフラとして悪用されるおそれがあることから、こうした特徴を念頭に置いた戦略的な実態解明を行っています。これまでの取組によって、地下レンタカー(注1)やアリバイ会社(注2)等の犯罪インフラが新たに把握されています。

注1:道路運送法に基づく許可なくレンタカー事業を行うものをいいます。出入国管理及び難民認定法違反事件の捜査の過程で、地下レンタカーが運転免許のない不法滞在者等の交通手段になっているなどの実態が明らかになっています。
注2:顧客からの依頼に基づき、その顧客があたかも実在する会社で稼働しているかのように装い、第三者に対してその旨を証明することなどを有償で請け負う会社

事例
 アリバイ会社の社長(32)らは、虚偽の源泉徴収票を詐欺グループに販売しており、同グループはそれを利用して約5,600万円の住宅ローン融資金をだまし取っていた。平成21年12月、市の徴税吏員から、同グループの一員が同社で稼働しているか否かにつき電話で質問を受けた際、稼働している事実はないのに、同社が販売した源泉徴収票が事実と異なる内容であることを隠すため「同社で働いている」旨の虚偽の回答をしていたことから、23年9月、同社長らを地方税法違反(虚偽答弁)で逮捕した(北海道)。
 

(3)犯罪インフラ事犯等の検挙状況

 警察では、犯罪インフラの解体等を図るべく、犯罪インフラ対策プランに基づき、犯罪インフラ事犯(注1)及び犯罪インフラ利用事犯(注2)の検挙を推進しています。
 平成23年中は、虚偽の養子縁組を伴う臓器の移植に関する法律違反事件、偽造された外国人登録証明書を利用した携帯電話詐取事件、中国人らによる地下銀行(銀行法違反)事件を始め様々な犯罪インフラ事犯等を検挙しました。

注1:犯罪インフラの構築に資する犯罪
注2:犯罪インフラをその実行、準備又は事後措置に利用した犯罪

事例
 原則として親族間のみでしか認められていない生体腎移植術を受ける目的で養子縁組を行って、虚偽の親子関係を作り出したとして、23年7月までに、暴力団構成員(50)ほか医師等9人を電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪で逮捕した。なお、移植術に使用される腎臓の提供についての対価として現金の授受があったとして、臓器の移植に関する法律違反でも逮捕した(警視庁)。
 

(4)犯罪インフラを生まないための環境づくりの推進

 警察では、様々な制度、サービス等が犯罪インフラとして悪用されることを防止するため、また、悪用されている状態を解消するため、注意喚起のためのポスターを掲示するなど広く国民に犯罪インフラ対策についての理解を促しています。
 また、金融機関、携帯電話事業者を始め、各種制度やサービスを所管・提供している関係機関・団体等との間で犯罪インフラについての情報共有を推進するなど、その理解と協力を得ながら、関係機関・団体等との連携強化に努めています。
 
犯罪インフラ対策ポスター
犯罪インフラ対策ポスター

 II 犯罪インフラ対策の推進

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