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トピックスI 捜査手法、取調べの高度化への取組


 近年、警察の取調べの在り方が厳しく問われる無罪事件等が続いたことから、捜査に対する国民の信頼を確かなものとするため、捜査手法、取調べの高度化に向けた各種の取組を行っていきます。

 捜査手法や取調べは治安そのものに大きく関わることから、警察では、それらの高度化を図るための調査・研究や施策に取り組んでいます。また、客観証拠による立証に資するよう、捜査手法の高度化の一環として、科学技術を活用した捜査を推進しています。

(1)捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会

① 研究会における検討

 国家公安委員会委員長が主催し、有識者から構成される「捜査手法、取調べの高度化を図るための研究会」(以下「研究会」という。)は、治安水準を落とすことなく取調べの可視化を実現するため、2年程度をかけて幅広い観点から検討することを目的として発足しました。平成22年2月から24年2月までに合計23回開催され、諸外国の捜査の在り方等に関する調査・研究の結果等を踏まえつつ、取調べの可視化、捜査手法の高度化等について検討が行われたところです。
 
研究会の様子
研究会の様子

 23年4月には中間報告が取りまとめられ、取調べの可視化を既に実施している諸外国では我が国にはない様々な捜査手法が用いられている一方、我が国における取調べは、諸外国に比べ真相解明上の意義・役割が大きいことなどが明らかにされました。24年2月に取りまとめられた最終報告では、取調べの録音・録画の試行を拡充すべきこと、警察捜査にとって有効性が高いと認められ、かつ、国民に対する権利侵害の程度を考慮しても導入が相当であるなど、実現可能性が高い捜査手法については、順次速やかに導入に向けた検討を進め、実現を図っていくべきであることなどが示されました。
 
図I-1 警察における取り調べの録音・録画の試行の経過
図I-1 警察における取り調べの録音・録画の試行の経過

② 警察における取組

 警察庁では、研究会の最終報告に盛り込まれた提言を受け、24年3月、「捜査手法、取調べの高度化プログラム」を策定し、次の3つの柱となる施策を推進しています。

ア 取調べの録音・録画の試行の拡充
 警察では、裁判員裁判における自白の任意性の効果的・効率的な立証に資する方策について検討するため、20年9月から警視庁等において取調べの録音・録画の試行を開始し、21年4月からは全ての都道府県警察で試行を実施していましたが、24年4月からは、裁判員裁判対象事件について自白事件に限らず必要に応じて否認事件等にも試行を拡大するとともに、様々な場面を対象に試行を実施しています。また、同年5月からは、知的障害を有する被疑者に係る事件についても試行を開始しています。
 
取調べの録音・録画の試行状況(イメージ)
取調べの録音・録画の試行状況(イメージ)

イ 取調べの高度化・適正化等の推進
 取調べにおいて真実の供述を適正かつ効果的に得るための技術の在り方やその伝承方法について、時代に対応した改善を図るとともに、的確な捜査指揮等により捜査の一層の適正化を図るため、取調べの高度化・適正化等を推進しています。

ウ 捜査手法の高度化等の推進
 取調べ及び供述調書への過度の依存から脱却するとともに、科学技術の発達等に伴う犯罪の高度化・複雑化等に的確に対応し、客観証拠による的確な立証を図ることを可能とするため、DNA型データベースを拡充するための取組や通信傍受の拡大を始めとする捜査手法の高度化に向けた検討を推進しています。

(2)科学技術を活用した取組例

① DNA型鑑定、DNA型データベースの活用

 警察庁では、平成17年9月から、被疑者DNA型記録及び遺留DNA型記録を登録・対照するDNA型データベースの運用を開始し、捜査に活用しています(注1)。23年12月末現在、DNA型データベースの活用により被疑者が確認された事件は1万6,456事件(1万2,696人)となっています。

注1:第2章第2節2参照
 
図I-2 被疑者DNA型記録と遺留DNA型記録の登録件数(累計)の推移(平成19~23年)
図I-2 被疑者DNA型記録と遺留DNA型記録の登録件数(累計)の推移(平成19~23年)
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② 防犯カメラ画像の解析等

 警察では、防犯カメラ等で撮影された画像の解析や識別を行い、捜査に活用しています。このうち、三次元顔画像識別システムは、防犯カメラ等で撮影された人物の顔画像と別に取得した被疑者の三次元顔画像とを照合し、個人を識別するシステムです。このシステムは、防犯カメラの普及(注2)とあいまって被疑者の犯行を裏付ける有効な捜査手法となっています。

注2:第3章第3節4③ウ参照
 
図I-3 三次元顔画像識別システムによる顔画像照合
図I-3 三次元顔画像識別システムによる顔画像照合

③ デジタルフォレンジック(注3)の強化

 携帯電話、コンピュータ等の電子機器が一般に普及し、多くの犯罪に利用されている中、23年6月の刑法改正により不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるコンピュータ・ウイルスに関する罪)が新設され、コンピュータ・ウイルスの解析が必要不可欠になるなど、犯罪捜査における電磁的記録の適正な解析はますます重要になってきています。警察では、目まぐるしく変化する情報通信分野の情勢に的確に対応するため、関係機関と連携しながら、電磁的記録の解析能力を強化しています。

注3:犯罪の立証のための電磁的記録の解析技術及びその手続
 
図I-4 デジタルフォレンジック
図I-4 デジタルフォレンジック

 I 捜査手法、取調べの高度化への取組

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