特集:大規模災害と警察~震災の教訓を踏まえた危機管理体制の再構築~ 

6 業務継続性の確保

 地震、津波、原子力災害等の大規模災害発生時においては、警察職員の被災や警察施設の損傷が避けられない。警察では、本震災における反省・教訓を踏まえ、従来の想定以上に被害が甚大である事態においても、災害応急対策業務を行いつつ、治安の確保に必要な警察活動を継続できるよう、業務継続性の確保に係る取組を推進している。

(1)警察庁における取組
 首都地域には、政治、行政、経済の中枢機能が集積しており、他の地域と比較して人口や建築物の密集度が高いことから、首都直下地震が発生した場合、人的・物的被害は甚大になると想定されている。
 こうした情勢を踏まえ、警察庁では、平成24年5月、「国家公安委員会・警察庁業務継続計画」を改正するとともに、災害発生時における情報伝達・非常参集の迅速化、非常時優先業務の再選定や備蓄物資の拡充等による業務継続体制の見直し、警察庁の庁舎が機能を喪失した際のバックアップ拠点の多重化等に係る取組を推進している。
 また、都道府県警察に対し、大規模災害に対応するための業務継続計画の策定に関するガイドラインを発出するなど、業務継続性の確保に係る指導を行っている。
 
図-20 警察庁における業務継続性の確保に係る取組
図-20 警察庁における業務継続性の確保に係る取組

(2)都道府県警察における取組
 大規模災害発生時、被災者の避難誘導及び救出救助、行方不明者の捜索、検視・身元確認、緊急交通路の確保、被災者支援、被災地におけるパトロール、犯罪取締り等を滞りなく実施するため、都道府県警察において、知事部局等の関係機関と連携しながら、業務継続計画の策定やバックアップ拠点の整備等、業務継続性の確保に係る取組を推進している。
 また、大規模災害発生時において迅速・的確な初動措置等が講じられるよう、平素より図上訓練や実動訓練を実施することで対処能力の向上に努めている。

事例①
 神奈川県警察では、23年11月、大規模な地震によって神奈川県全域に甚大な被害が発生したとの想定の下、大震災初動対応訓練を実施した。同訓練では、職員全員の参集訓練を実施したほか、警察本部が被災した場合の代替施設である「神奈川県警察総合研修センター」に指定職員を参集させるとともに、警察本部から代替施設要員を派遣し、同施設の立ち上げ訓練を実施するなどした。
 
代替施設の設置訓練
代替施設の設置訓練

事例②
 北海道警察では、23年7月、夜間に発生した大規模地震によって釧路市内全域が停電し、非常用電源も使用できなくなったとの想定の下、指定職員の参集訓練を実施したほか、非常用発電機の搬送、通信機器の設置等を含めた災害警備本部の設置訓練を実施した。
 
災害警備本部設置訓練
災害警備本部設置訓練

事例③
 秋田県警察では、23年12月、津波の被害が予想される沿岸警察署の代替施設を確保するため、海岸に近接する警察署と県立大学や自治体等との間で施設使用に係る協定を締結した。
 
協定の調印式
協定の調印式

 第2節 災害に係る危機管理体制の再構築

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