第5章 公安の維持と災害対策 

警察活動の最前線


警備犬ハンドラーとして

警視庁警備部警備第二課
大牟田 義貢(おおむた よしつぐ) 警部補
 
警視庁マスコットキャラクター ピーポくん
ピーポくん

 警備犬は、ずば抜けた敏しょう性と攻撃力、人間の約5,000倍以上と言われる嗅覚、10倍以上と言われる聴覚といった犬の特性をいかし、刃物や銃器等を所持している凶悪犯人の制圧検挙、警衛警護における行き先地での爆発物の捜索や災害現場における要救助者の捜索等を行っております。
 平成16年10月に発生した新潟県中越地震では、まだ余震が続く土砂崩れ現場の急斜面の上を担当犬(レスター号)と共に懸命な捜索活動をした結果、約90時間後に自動車内に取り残された男の子の生存を確認し、救出することができました。あれから7年、当時2歳だった男の子が、小学2年生になり、その子が一生懸命に書いてくれたレスター号宛ての感謝の手紙が届いた時は、感無量であの時以上の涙が込み上げてきました。
 昨年はニュージーランド震災派遣から帰国した後、東日本大震災が発生し、福島県相馬市に派遣されました。現場は想像を絶する悲惨な光景で、一人でも多くの生存者を発見しようと津波による倒壊家屋のがれきの間を懸命に捜索しました。
 これからも、どのような現場にも対応できるよう、「相棒」の警備犬とともに訓練を積み重ねていきます。
 
警視庁警備部警備第二課 大牟田義貢(おおむた よしつぐ) 警部補

被災者の期待に応えるために

大阪府警察本部警備部第二機動隊
安東 大志(あんどう ひろし) 巡査部長
 
大阪府警察本部マスコットキャラクター フー君ケイちゃん
フーくん ケイちゃん

 昨年9月、台風第12号による水害が発生した和歌山県に出動しました。大雨が降り続く中、氾濫した河川の濁流で他と寸断された集落の家屋に被災者が取り残されており、その中に生後数か月の赤ちゃんを抱いた母親がいました。
 三連はしご等の資材を駆使して全員を救出したものの、日没が刻一刻と迫る中、避難所までの山道はぬかるんでいた上に所々が激流で寸断されており、避難には相当な危険が伴いました。「女性が赤ちゃんを抱いたままでは無理だ」と判断した私は、自ら赤ちゃんを抱いて避難所まで誘導に当たることとしました。
 途中、激流に足をすくわれ、赤ちゃんを濁流に落としそうになり「無事に下りられるのか」と恐怖に体が震えましたが、腕の中で私の服をしっかりとつかみ眠る赤ちゃんを見て「絶対にこの子を送り届けるぞ」と自らを鼓舞し、道なき道を進みました。避難所に無事到着し、母親に赤ちゃんを渡した時の達成感と母親の感謝の言葉は忘れられません。
 私たちは、現場で必要な技術と判断力を養うため、重い楯と防護衣を装備して何十分も走ったり、ロープを使って高い建物の屋上から降下したりするなど、毎日様々な訓練をしています。今後も努力を惜しまず訓練に励み、被災者の期待に応えていきたいと思います。
 
大阪府警察本部警備部警備第二機動隊 安東大志(あんどう ひろし) 巡査部長

注:掲載されているキャラクターは、都道府県警察のマスコットキャラクターです。

 警察活動の最前線

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