第2節　警察活動の支え

１　警察の体制

（１）定員

平成２３年度の警察職員の定員は総数２９万２，１１１人であり、このうち７，７３２人が警察庁の定員、２８万４，３７９人が都道府県警察の定員である。

（２）警察力強化のための取組

地方警察官^（注１）については、平成１３年度から２２年度までの間に、合計２万６，０５７人の増員を行ってきたところ、刑法犯認知件数が、１５年以降８年連続して減少するなど、地方警察官の増員は、他の諸施策と併せ、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安の回復に効果をもたらしていると考えられる。

しかしながら、刑法犯認知件数は、いまだに治安が良好であると考えられていた昭和４０年代と比較すると依然として高い水準にあるほか、犯罪のグローバル化、サイバー犯罪の増加等新たな治安の脅威に直面するなど、治安情勢は依然として厳しく、引き続き、あらゆる角度から警察力の強化に努める必要がある。そのため、警察としては大量退職期が到来していることを踏まえつつ、次のような警察力強化のための取組を強力に推進し、厳しい治安情勢に的確に対応することとしている。

注１：地方警務官を除く都道府県警察の警察官

<1> 地方警察官の増員

２３年度には、公訴時効の廃止に伴う捜査体制の整備、サイバー犯罪の取締りを強化し、IT 社会における国民の安全・安心を確保するための新たな捜査体制の構築及び一層緻密かつ適正な死体取扱業務を推進するための体制強化を図るため、地方警察官８３３人の増員を行った^（注２）。

注２：警察官一人当たりの負担人口は、平成１２年度（増員前）の５５７人から、２３年度（増員後）は５０５人（人口は２２年３月３１日現在の住民基本台帳による。）となった。

<2> 退職警察職員の積極的活用

交番相談員、捜査技能伝承官等の非常勤職員を拡充し、また、再任用制度を積極的に活用することで、即戦力たる退職警察職員により現場執行力を補完するとともに、経験豊富な警察職員の優れた技能等を若手警察職員に伝承している。

<3> 警察力の質的強化

情報通信技術（IT）の活用による業務の省力化・効率化等により、限られた人的資源を一層有効に活用している。

<4> 優秀な人材確保のための採用募集活動の強化

警察庁では、警察官という職業の魅力をアピールし、都道府県警察の採用募集活動を強力に支援している。このような取組等の結果、２２年度に実施した警察官採用試験の競争倍率は９．５倍となり、３年連続で前年度を上回った。

（３）女性職員の活躍

警察では、従来から女性職員の採用に積極的に取り組んでおり、平成１４年度以降、毎年１，０００人を超える女性警察官が採用されている。２３年４月１日現在、全国の都道府県警察には、女性の警察官約１万６，７００人（育児休業中の者を含む。）、一般職員約１万１，９００人が勤務しており、幹部への登用も進んでいる。都道府県警察で採用され、警部以上の階級にある女性警察官は、２３年４月１日現在、１９０人であり、警察本部の課長を始め、警察署の刑事課長等にも登用されている。また、女性が被害者となる性犯罪や配偶者からの暴力事案等において、捜査や被害者支援に女性職員の能力や特性が生かされているほか、暴力団対策、警衛・警護等を含め、全ての分野にその職域が拡大している。警察庁では、２３年２月、男女共同参画社会の実現や警察官の質の確保等のため、各都道府県警察に対して、女性警察官の採用・登用のより一層の拡大に向けた計画を策定するよう指示した。

コラム〔1〕　「努力次第」を信じて （前愛知県知多警察署長（２３年３月２２日から愛知県警察本部警務部参事官兼住民サービス課長） 三輪千佳子警視） 警察官を志した頃は正直、「人の役に立ちたい」などというしっかりとした志望動機はありませんでした。ただ、採用案内に、「努力次第で男女の差なく昇任することができる」とあるのを見て、「頑張ろう。夢は県警で女性初の署長になること」と思ったことをなぜか今でも、鮮明に記憶しています。 可愛がられた２０歳代、夜遅くまで仕事に熱中した３０歳代、４０・５０歳代は、言うべきことをきちんと言える幹部として、「努力次第」を信じ、多くの人々に支えられ、感謝しながら、一歩、一歩、確実に歩んできました。 今は、明確な目標を持って警察官を志す女性が大半であり、採用も登用も拡大されています。能力を発揮できるチャンスにも恵まれています。 管内の治安維持という警察署長の職責は女性でも男性でも変わりません。私も他の警察署長と同じように、署員と一丸となり、また、住民の方々と協力しながら、管内の治安維持に日々取り組んでいるところです。

（４）精強な第一線警察の構築

近年、警察官に対する公務執行妨害事件が多数発生するなど、その職務執行を取り巻く環境が悪化しているとともに、最近の地方警察官の退職者数及び採用者数の増加に伴い、警察組織の人的構成が大きく変化しつつあり、これに伴う現場執行力の低下が懸念されている。

このため、これらの影響が最も懸念される地域警察部門を中心として精強な第一線警察を構築するため、各都道府県警察において、「地域警察を中心とした精強な第一線警察の構築のための総合プラン」を策定し、幹部の指揮能力の強化、若手警察官の早期戦力化、初動警察の要である通信指令の刷新強化等の各種施策を推進している。

（５）教育訓練

警察職員には、適正に職務を執行するため、円満な良識と確かな判断能力や実務能力が必要とされる。警察学校や警察署等の職場では、誇りと使命感に裏打ちされた高い倫理観と職務執行能力を兼ね備えた警察職員を育成するため、教育訓練の充実強化を図っている。

<1> 警察学校における教育訓練

都道府県警察の警察学校、警察庁の管区警察学校、警察大学校等では、対象者の階級及び職に応じて、次のような体系的な教育訓練を実施している。

<2> 職場における教育訓練

警察署等の職場では、個々の警察職員の能力又は職務に応じた個人指導や研修会の開催等により、職務執行能力の向上を図っているほか、経験豊富な警察官や退職警察官の講義等を通じ、専門的な知識及び技能の伝承に努めている。また、適切な職務執行を行うとともに、高い倫理観を培うため、有識者による講習会等を行っている。

<3> 術科訓練の充実強化

凶悪犯罪に的確に対処できる精強な執行力を確保するため、柔道、剣道、逮捕術、拳銃等の術科訓練を実施している。特に、様々に変化する状況に的確に対応する能力を培うため、映像射撃シミュレーター^（注）等による拳銃訓練を始め、実際の現場で発生する可能性の高い事案を想定した実践的な訓練の充実強化を図っている。

注：スクリーンに投影した映像に向け、レーザー光線で射撃を行う訓練装置

（６）警察官の殉職・受傷

警察官は、個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるため、自らの身の危険を顧みず職務を遂行し、その結果、不幸にして殉職・受傷する場合がある。平成２２年中には、道路冠水に伴う通行車両の迂回誘導に従事していた警察官が、前方不注視の車両に衝突され、殉職する事案等が発生した。警察では、殉職・受傷した警察官又はその家族に対して、公務災害補償制度による公的補償のほか、賞じゅつ金の支給等の措置をとっている。また、果敢な職務執行に対しては、警察庁長官名による表彰を行っている。