第4章 公安の維持と災害対策

5 大衆運動の動向

(1)国際会議に対する過激な反グローバリズム運動等

平成22年6月にカナダで開催されたG20トロント・サミットにおいて、労働組合や市民団体等約1万人が取り組んだデモに参加した反グローバリズムを掲げる過激な勢力等が暴徒化し、警察部隊と衝突して、警察車両に対する放火や店舗の破壊等を行い、約900人が身柄を拘束された。また、同年11月に韓国で開催されたG20ソウル・サミットでは、労働組合や市民団体等が主催する集会やデモに約3,500人が参加し、一部の参加者が警察と小競り合いになったが、逮捕者等はなく平穏に終了した。

G20ソウル・サミットにおけるデモ警備(時事)

G20ソウル・サミットにおけるデモ警備(時事)

(2)我が国の捕鯨を取り巻く国内外の動向

米国の環境保護団体「シー・シェパード(Sea Shepherd)」は、平成21年12月から22年2月にかけて、我が国の調査捕鯨に対する妨害活動に取り組み、ロープの海中投下や酪酸入りの瓶の投てき、調査捕鯨船への船舶の衝突等の過激な妨害行為を行った。また、調査捕鯨船に侵入した活動家が身柄を拘束され、海上保安庁に逮捕される事案も発生した。

さらに、同団体は、和歌山県太地町におけるイルカ漁に抗議する目的で、22年9月から同町に活動家を派遣し、「監視活動」と称して、イルカ漁の様子をビデオ撮影してウェブサイトに掲載するなどの抗議行動に取り組んだ。こうした中、同町では、イルカの生け簀(す)の網等が切断される事件が発生し、「ザ・ブラック・フィッシュ」を名乗る者による犯行声明がウェブサイトに公表された。

調査捕鯨船に対する妨害行為(提供:(財)日本鯨類研究所)

調査捕鯨船に対する妨害行為(提供:(財)日本鯨類研究所)

(3)在日米軍再編等をめぐり取り組まれた運動

普天間飛行場移設問題をめぐり、平成22年4月、沖縄県読谷村や、鹿児島県徳之島において、大規模な反対集会が行われた。同年5月の日米合意後も、辺野古移設に反対する団体等は、沖縄県内を中心に、「普天間基地の無条件撤去、県内移設反対」などと訴え、抗議集会やデモを行った。

県内移設に反対する県民大会(時事)

県内移設に反対する県民大会(時事)

(4)雇用問題等を捉えて取り組まれた運動

全国労働組合総連合(全労連)は、平成22年7月に開催した第25回定期大会において、「大企業中心社会からの転換、貧困と格差の解消、雇用の安定とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の確立、社会保障の拡充」等を運動方針として掲げるとともに、同年9月から毎月第3金曜日を「ディーセント・ワークデー」に設定し、労働者派遣法改正や有期雇用規制強化を求める運動を行った。


第3節 公安情勢と諸対策

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