第4章 公安の維持と災害対策

3 右翼の動向と対策

(1)右翼の動向

<1> 批判活動の展開

右翼は、平成22年中、日本政府の政策や尖閣諸島周辺領海内での海上保安庁巡視船に対する中国漁船の衝突事件等を捉え、日本政府や中国等に対する批判活動を執拗に行った。

また、北朝鮮をめぐっては、朝鮮学校の授業料無償化問題等を捉え、韓国をめぐっては、竹島問題等を捉え、ロシアをめぐっては、北方領土問題等を捉え、それぞれ関係国、日本政府等を批判した。

右翼が上記の批判活動に動員した団体数、人数及び街頭宣伝車数は、表4―4のとおりである。

このほか、極端な民族主義・排外主義的主張に基づき活動するいわゆる右派系市民グループは、「外国人参政権反対」などと主張して各地で集会・デモ等を行い、その過程で反対勢力とのトラブルもみられた。

右派系市民グループの抗議行動(3月、京都)

右派系市民グループの抗議行動(3月、京都)

表4―4 右翼による批判活動に伴う動員数(平成22年)

<2> 右翼関係事件の傾向

22年7月、右翼団体元構成員が、参議院議員通常選挙候補者の街頭演説会場において拳銃を所持していた銃砲刀剣類所持等取締法違反事件(拳銃所持)や、同年9月、右翼団体構成員が、尖閣諸島問題を捉え、在長崎中華人民共和国総領事館及び在福岡中華人民共和国総領事館に対して発煙筒を投てきした軽犯罪法違反事件(危険物投注等の罪)等が発生している。

近年の右翼による違法行為の検挙状況の推移は、図4―10のとおりである。

図4―10 右翼関係事件の検挙状況の推移(平成18~22年)

このうち、右翼運動に伴う事件(注)の検挙状況、右翼による恐喝事件や詐欺事件等の資金獲得を目的とした事件の検挙状況、右翼及びその周辺者からの銃器押収状況は、それぞれ表4―5のとおりである。

表4―5 右翼運動に伴う事件の検挙状況等(平成22年)

注:右翼が街頭宣伝活動、抗議活動等を行う過程で引き起こした事件

(2)右翼対策の推進

<1> テロ等重大事件の未然防止に向けた違法行為の検挙

警察では、右翼によるテロ等重大事件の未然防止を図るため、銃器犯罪や資金獲得を目的とした犯罪を中心に、様々な法令を適用して違法行為の徹底検挙に努めている。

事例

政治団体幹部(36)は、住宅購入に際し、住宅ローン融資を受けるための条件を満たしていなかったことから、仲介不動産業者と共謀し、実在する会社に勤務し、給与収入を得ているように装い、同社名義の源泉徴収票等を提出するなどして、金融機関から4,200万円の融資を受けた。平成22年7月、詐欺罪で逮捕した(愛知)。

詐欺(図解)

<2> 街頭宣伝車対策の推進

警察では、右翼が街頭宣伝車を用いて行う活動のうち、国民の平穏な生活に影響を及ぼす悪質なものについては、様々な法令を適用して徹底した取締りに努めている。

22年中の取締り状況は表4―6のとおりである。

表4―6 平成22年中の取締り状況

街頭宣伝車の取締り状況

街頭宣伝車の取締り状況


第3節 公安情勢と諸対策

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