特集II:安全・安心で責任あるサイバー市民社会の実現を目指して

3 サイバーテロに関する情勢

高度情報通信ネットワークが発達した現代社会では、重要インフラの基幹システムに対してサイバー攻撃が実行された場合、国民生活や社会経済活動に甚大な支障が生じるおそれがある。サイバー攻撃は、コンピュータとネットワークへのアクセスが確保できれば、時と場所を選ばず実行が可能であるという特徴がある。こうした中、以下のような事例が発生しており、サイバーテロの脅威はますます現実のものとなっている。

図―24 サイバーテロと重要インフラ

事例〔1〕

平成22年9月、中国のハッカー集団である「中国红客联盟(こうきゃくれんめい)」と称する者が、尖閣諸島の中国領有権を主張する民間団体のウェブサイト上で、我が国の政府機関等に対してサイバー攻撃を行うよう呼び掛け、警察庁のウェブサイトに対してこれに関連したとみられるアクセスが集中し、閲覧困難な状態となった。

事例〔2〕

22年9月、イラン国営通信等は、同国の原子力発電所等のコンピュータ約3万台が、電力、ガス等の産業用システムを標的とする「スタックスネット」と呼ばれるコンピュータ・ウイルスに感染した旨報じた。我が国では、産業用システムにおける被害は確認されていないが、複数のコンピュータが感染したとみられる。

事例〔3〕

21年から22年にかけ、鉄道事業者等のウェブサイトが改ざんされ、ウェブサイト利用者のコンピュータがガンブラー・ウイルスに感染する事案が発生した。

コラム〔2〕 サイバーインテリジェンスの脅威

政府機関や民間企業において、情報を電子データとして保存することが一般的となっているところ、近年、これらの機関等に対する標的型メール攻撃が発生しており、サイバー空間における諜報活動であるサイバーインテリジェンスの脅威も現実のものとなっている。

サイバーインテリジェンスにより機密情報が窃取されると、我が国の治安、外交や安全保障に重大な影響が生じるおそれがある。また、重要インフラの基幹システムの設計やぜい弱性に関する情報が窃取された場合、それらを悪用して、サイバーテロが実行されるおそれもある。警察では、こうした活動の実態解明に努めるとともに、違法行為に対しては厳正な取締りを行うこととしている。

図―25 不正プログラム添付メールを利用したサイバーインテリジェンス


第1節 サイバー犯罪の現状

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