平成20年警察白書概要 

平成20年警察白書概要
特集:変革を続ける刑事警察

第1節 刑事警察の歴史
 戦後、犯罪の捜査が警察の責務とされて以来60年間、我が国の社会情勢、国民意識等が急激に変化する中で、刑事警察は、捜査力の強化及び捜査の適正化の要請にこたえるための取組みを推進してきた。

第2節 警察捜査を取り巻く状況
 今日、刑法犯認知件数は平成14年をピークに減少傾向にあるものの、社会環境の変容や犯罪の組織化の進展等を受けて、警察捜査を取り巻く環境は一層厳しくなり、捜査負担は増加している。また、裁判員制度の導入等の一連の司法制度改革に対して適切に対応することが求められているほか、被疑者取調べの在り方が問われる深刻な無罪判決等を契機として、取調べの一層の適正化が喫緊の課題となっている。こうした中、警察では、20年1月に策定した「警察捜査における取調べ適正化指針」に係る諸施策の着実な実施に努めている。

第3節 変革を続ける刑事警察
 警察においては、捜査力を強化し、犯罪の検挙を徹底するため、捜査体制の強化を図るとともに、DNA型鑑定等捜査における科学技術の活用を推進し、また、捜査員の能力向上に向けて各種教育訓練を充実させるなど、犯罪捜査をち密かつ適正に行うための変革を続けている。

第4節 今後の展望
 今後も、DNA型記録データベースの充実等、科学技術を活用した犯罪捜査を更に推進するほか、携帯電話等を悪用した匿名性の高い犯罪等のこん跡をたどるための捜査環境の整備や、退職警察官から若手捜査員への各種捜査技能の伝承等の教育訓練の充実、通信傍受やプロファイリングといった有効な捜査手法の活用等により、捜査力を一層強化し、犯人の検挙を望む一人一人の国民のために犯罪と対決していく。

トピックスI:我が国における平成20年G8司法・内務大臣会議の開催について
 国境を越える犯罪から国民の安全を守るためには、国内の対策を充実させるだけでは十分でないことから、警察庁は、主要8か国(G8)各国の治安担当機関と連携し、国内治安に資する国際組織犯罪対策及びテロ対策を推進している。2008年(平成20年)6月、我が国では初めてとなるG8司法・内務大臣会議を警察庁が法務省と共同で主催し、G8各国が一致団結して、国際組織犯罪及びテロの問題に対処していくことを強くアピールした。

トピックスII:インターネット上の違法情報・有害情報に対する警察の取組み
 インターネット上には違法情報・有害情報が氾濫し、これがインターネット上の安全・安心を脅かし、時には犯罪の引き金にもなっている。警察では、インターネット・ホットラインセンターからの通報、サイバーパトロール等を通じ、インターネット上の違法情報・有害情報の把握を進め、違法行為の取締りを進めるとともに、関係機関と連携して、これらの情報の削除や被害防止のための国民への啓発に努めている。

トピックスIII:自転車の安全利用に向けた警察の取組み
 自転車が関連する交通事故件数は交通事故件数全体の20.5%を占めるに至るとともに、自転車が無秩序に歩道を通行するなどのルールを守らない利用実態が見られることから、警察では、平成19年に道路交通法を改正したほか、自転車通行環境の整備、自転車安全教育を推進するなど、自転車の交通秩序整序化に向けた取組みを推進している。

トピックスIV:厳しい銃器情勢を踏まえた銃器対策の新たな取組み
 長崎市長射殺事件が発生するなど厳しい銃器情勢の中、政府を挙げて銃器対策を推進し、警察でも、「けん銃110番報奨制度」の導入等により違法銃器の取締りを強化したほか、銃砲刀剣類所持等取締法等の改正が行われた。また、警察では、長崎県佐世保市で発生した散弾銃使用殺傷事件を受け、銃砲に係る総点検を行い、その結果を踏まえ、銃刀法の改正を含めた銃砲規制の厳格化のための対策を推進しているほか、東京都千代田区外神田1丁目先路上で発生した刃物使用無差別殺人事件を受け、刃物規制の強化のための銃刀法改正作業を進めている。

第1章:生活の安全の確保と捜査活動 ・・・ 平成19年中の主な街頭犯罪及び侵入犯罪の認知件数は減少したが、依然として高い水準にあることから、警察では、引き続き街頭犯罪・侵入犯罪抑止総合対策を推進することとしている。また、通貨偽造犯罪、ヤミ金融事犯、廃棄物事犯、保健衛生事犯、サイバー犯罪の検挙件数が前年より増加しており、取締りの強化、広報啓発活動の推進等に努めている。
 警察では、安全で安心な暮らしを守る施策として、学校周辺、通学路等の安全対策等子どもの安全対策に取り組んでいるほか、ストーカー事案等への対応等女性を守る施策、安全・安心なまちづくりの全国展開、自主防犯活動に対する支援等地域社会との連携による治安回復への取組み、風俗関係事犯の取締り等良好な生活環境の保持への取組み等を行うとともに、少年の非行防止と健全育成、交番・駐在所等を中心とした国民の身近な不安を解消するための諸活動にも取り組んでいる。

第2章:組織犯罪対策の推進 ・・・ 暴力団による犯罪、犯罪組織の関与がうかがわれる薬物・銃器に関する犯罪、来日外国人犯罪組織による犯罪等の深刻化が、治安悪化の要因の一つとなっている。この状況を打開するため、警察では、資金獲得犯罪を始めとした暴力団犯罪の取締り、暴力団対策法の効果的な運用、暴力排除活動の推進等により暴力団の弱体化・壊滅を目指すとともに、薬物の供給の遮断及び需要の根絶に向けた対策、犯罪組織の武器庫や密輸・密売事件の摘発に重点を置いた銃器の取締り、国内外の関係機関と連携した国際犯罪組織の壊滅のための多角的な対策等を講じている。
 また、犯罪組織を弱体化させ、壊滅に追い込むためには、犯罪収益対策が重要であることから、犯罪収益移転防止法の円滑な施行を確保し、組織的犯罪処罰法を積極的に活用することなどにより、犯罪収益の移転防止及びはく奪を推進している。

第3章:安全かつ快適な交通の確保 ・・・ 平成19年中の交通事故による死者数は5,744人で昭和28年以来54年ぶりに5千人台となった。また、発生件数及び負傷者も前年に引き続き減少した。しかしながら、いまだ80万件以上の交通事故が発生し、負傷者数は9年連続で100万人を超えるなど、依然として憂慮すべき情勢にある。
 警察では、交通安全教育や運転者教育、悪質性・危険性、迷惑性の高い違反に重点を置いた取締りやち密な交通事故事件捜査等、交通事故を防止し、その被害軽減を図るための施策を総合的に推進している。
 また、道路交通のIT化、交通安全施設等整備事業、総合的な駐車対策等、安全で円滑な交通の確保のための対策を推進している。

第4章:公安の維持と災害対策 ・・・ 平成20年7月7日から9日にかけて開催された北海道洞爺湖サミットをめぐり、国内外の反グローバリズムを掲げる団体や極左暴力集団による大規模な抗議行動や右翼の取組み等がみられたが、全国警察が一体となって国際テロ、暴動等を封圧し、国内外要人の身辺の安全と行事の円滑な遂行を確保した。
 また、警察では、平成19年(2007年)能登半島地震、平成19年(2007年)新潟県中越沖地震等が発生した際に、広域緊急援助隊等を出動させるなどして、被災者の救出救助、避難誘導等の活動を実施したほか、国際テロ対策、北朝鮮等による対日有害活動や極左暴力集団、オウム真理教、右翼等に対する情報収集、取締り等の対策を推進するとともに、警衛・警護警備、サイバーテロ対策等に取り組んだ。

第5章:公安委員会制度と警察活動の支え ・・・ 警察では、公安委員会による管理の下、関係機関と連携して総合的な治安対策に取り組むとともに、組織及び人員の効率的運用、教育の充実による職員の実務能力と資質の向上、装備資機材の高度化等を更に推進するなど活動基盤の整備を進め、また、警察改革の持続的断行、情報管理の徹底等を通じて警察活動の適正確保のための取組みを進めている。
 このほか、犯罪被害者等に対する支援の充実、適正な留置業務の運営の徹底、警察署協議会の活用、我が国警察の特質をいかした知識・技術の移転による国際協力の推進、警察政策研究センターや科学警察研究所における調査研究等にも取り組んでいる。

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