特集 組織犯罪を許さない社会を目指して ~資金獲得活動との対決~ 

特集:暴力団の資金獲得活動との対決

特集に当たって

 本年の警察白書の特集テーマは、「暴力団の資金獲得活動との対決」である。
 暴力団が、我が国最大の犯罪組織であり、全国各地に存在し、暴力によって国民に脅威を与えている存在であることは言うまでもない。しかし、「任侠」や「仁義」といった大義名分に目を奪われてしまい、暴力団を必要悪として消極的に容認したり、又は面白がり、親しみを感じたりする風潮が、我が国の社会に色濃く残存していることは否定できないであろう。
 このような風潮がいまだに払拭されないのは、暴力団の実態が十分に明らかにされず、国民的な理解が深まっていないことが背景にあるものと思われる。特に、暴力団による資金獲得活動は、暴力団の本質が具体化されたものであるが、近年、その資金獲得活動がますます多様化・巧妙化しており、このことが、暴力団の本質を理解することを一層困難にしている。
 暴力団は、伝統的には、覚せい剤の密売、恐喝等の違法行為を通じてその活動のための資金を獲得してきたが、経済社会の変化に対応し、民事介入暴力や企業対象暴力を始めとする不当要求行為を敢行するようになり、最近では、その存在感を増しつつある「暴力団と共生する者」と共に、証券取引の分野にまで介入するようになってきている。
 このような暴力団の資金獲得活動は、我が国の経済社会活動の根本を侵蝕しかねない病理とも言えるものであり、これを放置すれば、我が国の経済活動の健全性を損ない、いずれは我が国全体の利益が侵奪されることになりかねない。警察として、暴力団の資金獲得活動との闘いに一層力を入れるとともに、国民との協働を強め、社会全体で対策を進めることが求められている。
 そこで、今回、暴力団の資金獲得活動の実態をできるだけ分かりやすく提示することにより、今後、社会全体で暴力団の資金源を封圧するための対策が大きく進捗する契機とするため、この特集を組むこととした。
 第1節では、最近における資金獲得活動の特徴的な動向を記述した。
 第2節では、戦後から現在までの資金獲得活動の変遷を記述した。
 第3節では、資金獲得活動を阻止するための現下の各種対策と、今後の課題等について記述した。
 この特集を通じ、暴力団の資金獲得活動の悪質さと、既に国民全体が暴力団の資金獲得活動の対象となり、「堅気には迷惑をかけない」などといった言葉が完全に有名無実化している事実が明らかになり、警察、関係機関、国民等の連携によって的確で効果的な対策が推進されることにより、暴力団のいない安全で安心な社会が実現することを切に願うものである。

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